オヤイデさんにお借りしているポータブルミュージックプレーヤー「FiiO X5」ですが、今回は音質についてレビューしてみようかと。
PCM1792という、むしろ据え置き機で定評のあるDACチップを搭載していますが、ポータブルゆえの制限(物理的サイズや電源電圧など)もあるので、その実力をどこまで発揮しているかなと期待しての試聴開始です。
前回もちょっとだけ触れましたが、音質傾向としてはiPod classic以前の第5世代iPodのような方向性でしょうか。
見た目のイメージとはやや違い、情報量をふんだんに聴かせるタイプではなく、全体的な音楽バランスで聴かせる傾向だと感じます。
ポップスや小編成な楽曲ではややドライな傾向ながらもそれぞれの雰囲気を心地よく奏でてくれます。
とりわけ、クラリネットはツヤと柔らかさが両立していて良好でしたし、全般に管楽器や弦楽器が得意な傾向です。
反面、オーケストラではやはり分解能不足な面も出てきますが、これは手持ちのイヤフォン、ヘッドフォンとの相性もあるかもしれません。
うちはスピーカーで鳴らすことが多いのでそんなに良いヘッドフォンはありませんが、むしろコストパフォーマンス高めと言われる高能率のイヤフォンの鳴りっぷりの良さが目立った印象です。
ゲイン切り替えが設定に用意されていて、そういったイヤフォンでは本来はローをチョイスすべきですけど、意外にもハイ設定も低域に音色の変化が楽しめて面白かったです。
その低域部分ですが、どうも100Hz前後辺りの厚みがやや不自然に感じるポイントが個人的にありました。
全ての楽曲で気になるわけではないのですが、クラシックの一部ではかなり顕著に違和感が出るケースがあります。
そこで、X5にはよく出来たイコライジング機能もありますので、これを使ってみることに。
プリセットも用意されていますが、私はカスタマイズを使って上記のような設定にするのが好みにハマったようです。
上で挙げた100Hz前後のクセもこの62Hzを下げることでだいたい解消できたように思います。
こういう部分ってどうしてもポータブルでは「しっかり出ている低音」みたいなものを意識したチューニングというところもあるのかもしれませんね。
そういう部分ではiPodというよりもウォークマンを意識してるようにも思えました。
なお、上記のようにイコライジングをすると、なぜかフラット設定に比べて音量が下がってしまいます。
±2dB範囲内で上下に振り分けているんですけど、歪まないようにという配慮からプリセットで下げられてしまうのかもしれませんね。
後述しますがデジタル出力でもこのイコライジング(と音量低下)が効いてくるようです。
ヘッドフォンとイヤフォンでの違いという点では、高級なイヤフォンよりも多少廉価でも振動板の大きめなヘッドフォンのほうが情報量がしっかり乗ってくるような印象です。
アンプ部もしっかりしているのでしょうし、インピーダンスも多少は高めになりがちでしょうから、プレーヤー本来の駆動力を活かせるという面もあるのでしょう。
さらにプレーヤー単体だけではなく、LINE OUTや同軸デジタル出力も用意されていますので、こちらも試してみます。
LINE OUT用のステレオミニ-RCAのようなケーブルは残念ながら付属しませんが、同軸デジタル出力用のモノラルミニプラグからRCAメスの変換プラグは製品に付属していますので、こちらを使ってATOLL DAC100に繋いでみました。
普段のシステムで聴いてみると、さすがにやはりちょっと音がこじんまりするかなというのが正直な感想です。
同じ曲をCDからのデジタル出力で同時に鳴らし、切り替え試聴してみたんですけど、最初はそもそも音量が大幅に小さく感じてビックリしました。
さすがにデジタル入力でそこまで大きな違いはないはずで、よく考えたらさきほどのイコライジングが効いていたという…。
これが有用とも言えますが、音量差を差し引いても据え置き機とはやはり差が出てしまうのは仕方ないところでしょう。
デジタル出力があるとはいえ、ここは他のポータブルDACやポタアンと組み合わせて使うことを想定しておいたほうが良いかと感じました。
なお、イコライジングはデジタル出力に効いてきますが、ボリュームのほうはFIXEDになります。
むしろこっちにも効いてくれたら(もしくは設定で選べる)簡易プリみたいな使い方も可能かもしれませんが、ビット落ちが出てしまうからやっぱり厳しいかな。
音質面ではかなりシビアな評価を書きましたが、価格的にも手を出しやすいラインに抑えつつ高機能に仕上げていますから、さらに高みを目指すなら、いわゆる「二段積み」、「三段積み」と強化をしていく道がしっかり確保されている点も評価すべきでしょう。
あえてiPodやWalkmanをチョイスしない「通好み」という前提では、音質、操作性、拡張性とも十分に合格点の完成度だと感じるプレーヤーです。
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