• 228月

    8/25発売のDigifi No.15の付録となるD/Dコンバーター「TW-ST10-DDC」ですが、USB-DDC並みに期待なのがアナログ録音が可能という点です。

    th_DSC00513_LR5

    そこでStereoSoundもオススメAudacityを使って、アナログレコードの録音にチャレンジしてみました。
    接続にはUSBケーブルにQED Performance Graphite USB、RCAケーブルはLINN MAJIK-ILのREC OUTからTW-ST10-DDCまでQED QUNEX Silver Spiralを用いました。

    audacity

    入力レベルは基板上に物理的なボリュームこそありませんが、アプリ内からもAudio-MIDI設定からも調整可能です。
    24bitで入力されますし、アナログからの入力の場合はどこで急に大きな音が来るか分かりませんから、少し聴いてみてピークが-12dB前後くらいの低めのREC LEVELで録音しました。
    うちのフォノイコライザーだと入力レベルが0.7くらいでちょうど良い感じでした。
    音が小さすぎた場合は後でAudacityのエフェクトから「正規化」しても音質劣化はほぼ無視できるものでしょう。

    グールドのバッハやアシュケナージのショパンなど、いつも良く聴いているディスクをハイレゾデジタル化してみましたが、普段レコードのまま聴いているのと比べるとやっぱりちょっとだけデジタルっぽい音になります。
    以前、手持ちのRolandのUA-1EXの時はそれほどでもなかったような気がして、同じディスクを録り比べてみましたが、やはりUA-1EXのほうは多少その傾向が薄い印象です。

    TW-ST10-DDCのほうがスクラッチノイズも目立たず、いかにもハイレゾ音源っぽくて聴きやすいのですけど、なにか何処か物足りないところがあります。
    最初は高域が少なくなったのかな?とも思いましたが、どうやら低域が薄いのがその要因のようです。
    DDC側でも多少そういう傾向が感じられたので、ある意味、Olasonicさんの音作りのような部分もあるのかもしれませんね。

    私の聴感だけでは頼りにならないので、これまたAudacityに実装されているスペクトル解析で試してみました。
    まずは分かりやすくホワイトノイズでの比較をしてみます。
    Mac用のホワイトノイズ・ピンクノイズ生成再生ソフト「noisy」を利用させてもらいました。
    なお、ホワイトノイズの場合は高域まで高いレベルで音が出ますので、スピーカー再生に使うと最悪の場合、ツィーターを破損する危険がありますので、音量を完全に絞るか、ごく小さな音量で鳴らすように注意してください。

    テストの仕方としては、noisyから出たホワイトノイズをX-DDCからATOLL DAC100経由で再生し、それをLINN MAJIK-ILのREC OUT(出力インピーダンス:200Ω)からTW-ST10-DDCあるいはUA-1EXにアナログループバックで入力して録音した形です。
    一旦録音した音声をスペクトル解析した結果は以下のとおりです。

    [ TW-ST10-DDC ]
    whitenoise-st10-ddc

    [ UA-1EX ]
    whitenoise-ua1ex

    TW-ST10-DDCでは40Hz付近から低域が減衰しているのが分かります。
    高域もUA-1EXと比較すると15kHzくらいからわずかに減衰傾向です。
    なお、20kHz過ぎから急に落ち込んでいるのはnoisyの再生するホワイトノイズ自体のサンプリング周波数が44.1kHzであることによるもので、両者がハイレゾ帯域の録音が出来ていないということを示すものではありません。

    noisyにクセがある可能性も考えられますので、別途、ピンクノイズのwavファイルでも同様にテストしてみた結果は以下のとおりです。

    [ TW-ST10-DDC ]
    pinknoise-st10-ddc

    [ UA-1EX ]
    pinknoise-ua1ex

    ホワイトノイズの場合と同様の症状が見受けられますし、低域の特性にややうねりも感じられます。
    あいにくハイレゾ対応のピンクノイズ生成ソフトがMacでは見当たらなかったので試せませんでしたが、ややかまぼこ型の特性を見るとあまり強力に高域を残すというよりも可聴帯域内のレゾリューションと音傾向を大切にする方向かと思います。

    また、無音時の残留ノイズについても同様のアナログループバックで試してみました。
    こちらは非常に優秀で両者ともアナログ音源を録音するには全く問題ないレベル(全体域で-100dB以下)となっています。
    ただ、少し意地悪に残留ノイズを録音したものを、さきほどの「正規化」を使って極端に増幅して観察してみると、TW-ST10-DDCでは電源周波数である60Hzの倍数に微小なピークが見受けられます。

    [ TW-ST10-DDC ]
    backnoise-boost-st10-ddc

    この表示では暗雑音からすると60Hzでは20dBほど高い状態ですが、あくまでもこれは正規化で誇張されたものですので、その点は誤解なきようにお願いします。
    ただ、やはりバスパワーから回り込んだACノイズが影響を与えているところはあるのかもしれません。

    [ UA-1EX ]
    backnoise-boost-ua1ex

    UA-1EXのほうはなぜか14kHz付近にピークがあり、こちらは理由が定かではありませんがサンプリング周波数や機器内部の動作クロックなどに起因するものかもしれません。
    なお、再度念を押しておきますが、正規化前の状態だとノイズは残留ノイズは両者とも同等程度で、アナログ音源を録音するには十分すぎるほど、非常に優秀なものです。

    最後にまた聴感に戻り、アシュケナージのライブ盤で両者それぞれで録音したものを聴き比べてみます。
    再生にはAudirvana Plusを用いましたが、やはり低域の表現にだいぶ違いが出ています。
    TW-ST10-DDCはサブソニックフィルターが入ったような感覚ですが、これが出力インピーダンスやケーブル、個体差などに依存した結果かどうかは私の環境では確認しきれませんでした。
    なお、TW-ST10-DDCへの入力機器側の出力インピーダンスとしては22kΩ位までは想定されているとのことです。

    TW-ST10-DDCでは穏やかで丸くなって軽く聴こえてしまう傾向はありますが、ある意味、最近のハイレゾ音源っぽいもので、デジタル慣れした耳にはこちらのほうが受け入れやすい面もあるかと思います。
    UA-1EXはある意味、楽器の生録みたいなところがあり、レコードはレコードのまま「記録」されたような印象があります。

    なお、オマケですが、Audacityにはスクラッチノイズ除去やヒスノイズを取り除くような機能も備わっています。
    ただ個人的に試した結果としては、永久保存のためのデジタル化を考えるのであれば、これらの使用はあまりオススメしません。
    正直、音量の正規化だけでもデジタル臭さはやっぱり多少入ってきてしまうように感じるくらいですから、まずは録音したままのファイルも残しておいたほうが良いかと。
    オリジナルさえあればあとは何度でもカット&トライできるのがデジタルの良さですし。

    デジタル化したい音源をたくさんお持ちの方はまずはこの付録をゲットして、気軽にハイレゾ音源化にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
    その上で、より本格的にしっかり保存したい場合にはDSDレコーダーなどにグレードアップの道もありますしね。

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    Filed under: Audio
    2014/08/22 7:00 pm | Digifi No.15 付録DDC レビュー アナログ録音編 はコメントを受け付けていません

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