茶楽音人さんの新しいイヤホン「ちょんまげ3号」ですが、既発の「Donguri-鐘 HAGANE ver.」(以下、HAGANE)と聴き比べてみることにしました。
今回も試聴にはiPod nano/iPhone 4にCypher LabsのAlgoRhythm SoloをDAC、そしてポタアンはALO AudioのRx Amp MKIIという構成で、イヤホンのみ交互に取り換えて聴き比べていきました。
前回の感触では少しエージングが必要そうな印象がありましたが、その勘は当たっていて、一定以上聴き込んで音に厚みが出て、ボーカルには実体感が出てきましたし、さらに使っていくと当初どうしても軽かった中低音がだいぶ厚くなってきました。
スピーカーで言うとウーファーのエッジが柔らかくなってきて、2wayのバランスが良くなったような、そんな雰囲気に似ています。
まずはHAGANEで慣らし運転から始めてみました。
いつも聴きなれているせいもあって、やや高域がきらびやかな部分もありますが、響きが豊かで音場に広がりがあり、透明感を感じるものです。
あえて難点を挙げれば、楽器の立体感はやや不正確でしょうか。
ちょうどホールの真ん中あたりで聴いてるような感覚があるのが特徴です。
多少、繊細な表現をする部分もあり、たまにボーカルがやや細身に感じられる部分も見受けられますが、全般的には聴いていて楽しい、ほどよい演色性のあるサウンドです。
対して、ちょんまげ3号は非常に安定感のあるサウンドであり、かつ正確なモニターサウンドであることは前回から変わらぬ印象です。
ただエージングが進むにつれ、届いた当初よりも中低域は厚みを増してきたおかげもあり、ふくよかな音の広がりも感じられるようになりました。
むしろ、高域がややきつめに出ることのあるHAGANEとは印象が逆転する場面も出てきました。
とりわけ、ロックやジャズなどでは押しもあるし、解像度も高いですし、帯域のバランスが良いと感じます。
熱気と正確さが両立していて、こうした音圧が高めの楽曲への相性はやはり良いようです。
もちろん、他のジャンルでもそつなくこなすオーソドックスさと万能性を持っていて、安定感があります。
前述のように出音は全般的にモニター的ではありますが、聴き疲れする感じは皆無です。
ここでまたHAGANEに戻してみますと、曲によって位相が少しおかしい場合があるのに気づかされます。
HAGANEのDonguriにそういうエフェクター的な部分もあるということでしょうが、逆にちょんまげ3号がそれだけ正確なサウンドであるがために気づかされた部分も大きいと思います。
ちょんまげ3号を聴き込んだ上でHAGANEを聴いてみますと、やや派手めで分かりやすい音表現という薄い味付けがなされているようにも感じられました。
あえて苦手な部分を探すとすれば、ストリングスやピアノのスタジオ録音では表現がやや表層的になるきらいがあるかもしれません。
HAGANEのほうだと、それを感じないのですが、だからといってHAGANEのほうが正確というわけではなく、「らしい描写」をしてくれるといったほうが正しいでしょう。
HAGANEにはライブの響きと温度感があるという良さがあり、同じ曲でも、ちょんまげ3号ではスタジオモニターっぽく、正確に再現するがための差だと思います。
こうした素直さもあって、スタジオ録音の音源では、時としてやや没入感が不足しがちで、乾いた印象を受けるケースもありますが、やはり正確さでは、HAGANEより、ちょんまげ3号のほうが断然勝ります。
それを象徴的に感じたのは三線が歪まずに聴かせてくれた部分でして、これは特性の良さを象徴しているのではないかと。
しっかりエージングの進んだ、ちょんまげ3号では、ボーカルでも息遣いがこまやかに聴き取れますし、全般に高域が美しく、歪みが特筆的に少ないのが印象的でした。
結論としては、両者は同じメーカーと言っても、かなり毛色の違う製品だということでしょう。
ちょんまげ3号はスタジオモニター志向のIEM系ですし、HAGANEはライブ志向の臨場感エフェクター系です。
イヤホンに正確さを求めるか、個性を求めるかで使い分けたり、選んだりすべきものでしょう。
ただ、ちょんまげ3号は試聴しなくても平均点を軽々とクリアできる優等生さがあり、万人におススメできるのは「エージングのしっかり済んだ」ちょんまげ3号のほうです。
むしろ、下手にエージングが進んでないものを試聴すると間違った印象を受けてしまうかもしれません。
そういう点では、今回の製品に限らず、エージング済みのものを貸し出ししてくれるようなサービスがあると良いのかもしれません。
(当サイトでは、Amazonアソシエイトをはじめとした第三者配信のアフィリエイトプログラムにより商品をご紹介致しております。)