MSB Technologyから準フラグシップとなるDAC「Reference DAC」が11月に発売だそうで。
540万円(税抜)という縁もなさそうなモデルですが、今後のDACの方向性を考える上でも面白そうなポイントがいくつかあったので紹介させていただくことにしました。
MSBといえばディスクリート構成のサインマグニチュード・ラダー型DACが特徴ですが、ΔΣが良いのかどうかという点については様々な意見があるかとは思いますけれど、PCMを極めるならやはりΔΣ変調というのは「余計な処理」が入っているという風に感じてしまうのは私だけでしょうか。
最近のモデルはESSかAKMといった感じになっていますが、それってクルマで喩えればエンジンはヤマハ製とかそんな感じなわけで、ある程度の価格帯まではそれで良いとしても、価格だけはしっかり高騰している中にあってはやっぱり独自開発できる技術力があった上でDACを出してほしいなと感じます。
愚痴はそのくらいにして、このReference DACはそんなディスクリートのDACデバイスを4つ搭載し、合計で8chをパラレルで動作させています。
このパラレルというのも高級機で良く見かけますが、本来は一つの精度がしっかり確保されていればそんなにたくさんなくても良い気はします。
もちろんデュアルモノラル構成にすることはセパレーションの観点からも意義があると思いますが。
またこの機種で面白いのは入力やクロックなどがモジュール化されていて、小さなブロック状のユニットを交換することで機能をカスタマイズできる点です。
人間が古いもので、MERIDIANのプリアンプを思い出してしまいましたが、そんなMERIDIANが提唱するMQAに対応するUSBユニットも用意されています。
カスタマイズできるという観点でも面白いですし、個々にシールドされるという点でもメリットがありそうです。
もちろん、それを収納する筐体がアルミブロックのモノコックボディというのも含めて効果を発揮するのでしょうが、そこは多少簡素化しても、進化(環境変化)が激しいデジタル機器は見習うべきポイントかなと感じます。
ただ、クロックに関してはモジュール化により引き回しも長くなりそうですし、そこをうまくメリットにつなげるのは配置や構造上の工夫が必要でしょう。
電源が分離型なのもこの機種の特徴ですが、やや気になったのは筐体の高さがちょっと低いのかなと。
海外製品に多い印象なんですが、高さが低めのものが概して多く、そうするとコンデンサやトランスもその高さに収まるものにしなくてはならないわけで、設計にも苦労しそうだと思うんですよね。
DAC用の電源ですからそんなに巨大である必要はないのでしょうけれど、スイッチング電源ではなくアナログリニア電源とするのであればそれなりの大きさは必要かも。
もちろん、MSBともなればそこはちゃんと考えてあって、オプションでデジタルとアナログの電源を別筐体にしたオプション「Two Mono Powerbases」も用意されています。
光学メディアプレーヤーがピックアップ供給の観点からみても、どうもそろそろ厳しくなってきた感がありますし、そうなると高級機はトランスポート+DACという構成から、DAC+電源という筐体構成になってくるのかなぁとも思った次第です。
私自身は別筐体にするとどうしてもそう多くの種類の電圧を用意して…という形にはなりづらいでしょうし、安いモデルで真似をするとACアダプタが別筐体っぽくなっただけ、みたいになりかねないので、あんまり好意的ではないのですけどね。
いずれにしても、CHORDやdCS、MSBといったハイエンドDACは今後の他社製DACを牽引していくブランドであることには間違いないかと思います。
国産ブランドからもそれを真似た方向ではなく、しかも安易にDACチップに頼らない新たな方向性を示してくれるモデルが登場することを願うばかりです。
|
|
(当サイトでは、Amazonアソシエイトをはじめとした第三者配信のアフィリエイトプログラムにより商品をご紹介致しております。)