ACOUSTIC REVIVEのヒッコリーキューブインシュレーター「HQ-4」をリビングのスピーカー下に導入して非常に良好だったので、今回は手持ちの木製インシュレーターを集めてみまして、ケーブルインシュレーターとして比較してみることにしました。
ACOUSTIC REVIVEには「RCI-3H」というケーブルインシュレーターがあって私も愛用しているわけですが、今回は木材の材質や大きさなどでどんな風に違いが出てくるのかを確かめたいということで、単一素材で構成されたものだけを集めてみました。
HQ-4はヒッコリー、それ以外にウチにあったのはイタヤカエデ、アフリカ黒檀、マートルウッドで全部で4種類を比較する形です。
配置場所はまだケーブルインシュレーターを未配置だったプリ-パワー間の左右それぞれのXLRケーブル(Accuphase ASLC-30)と、アンプ用の電源タップへの電源ケーブルのIECインレット近辺の2箇所、合計3個を入れ替えてみて比較する形です。
まずはこれまで通りケーブルインシュレーターをこれらの場所に使っていない状態で聴いてみます。
基本的には普段の音ですが、ヘッドホンなどで楽曲を聴いた印象をベースに改めて聴いてみると、やや曇った感じで中低域がボヤけているかなぁという気がします。
やや大げさに言えば、マイクに布を被せたような感覚があります。
さてこの状態を保持したまま、ボリュームもそのままでイタヤカエデを配置してみました。
同じ曲を聴いてみると、重心が上ずっていると感じます。
よく言えば軽快とも言えるのですが、なんとなく普段よりもスピーカーの箱鳴りが目立つような音の風合いになっています。
これもちょっと大げさかもしれませんが、スピーカーのエンクロージャーが桐箱になったような軽さが出てしまっているようです。
中域はたしかに明瞭になったような気もしますが、どうもナローレンジ感が拭えません。
たったケーブル3箇所に入れただけなのに、これだけしっかり変化があるというのは面白いですね。
ただ、個人的には正直何もない時のほうが良い気がしました。
続いて同様に、アフリカ黒檀に入れ替えてみます。
こちらは本来、スパイク受けですのでやや小さめですが、その辺りの違いも後述しますが音には影響してくるような気がします。
リビングではスピーカーの下で使っていたのですけども、音がキツく感じる場面が結構ありました。
ケーブルインシュレーターでも音傾向はかなり似通っていて、まず「固い!」と感じました。
イタヤカエデの直後というのもあって特に硬質さが目立ちますが、低域はやはりスッキリ傾向です。
明瞭さはあり、音が良くなった感は強いのですが、やはりスピーカーの時と同様、ガラス的なキツさが残ります。
黒檀のイメージとしてはもう少し温かみのある音を予想していたのですが、それは単なるイメージのようですね。
イタヤカエデの時と比べれば曇った印象はだいぶ薄らいでいるので、無いよりはあったほうが良いようには思えます。
解像度も上がっているのも好印象なのですが、いかんせんそれを強調するかのごとく、シャープネスも効かせすぎた感覚があるのが残念です。
中低域もゴリっとした感じで、やや荒々しい一刀彫りのような風合いに聴こえます。
続いてはマートルウッドです。
こちらはやや大きめのもので、音傾向はややイタヤカエデに似ています。
こちらのほうがもっと広がる感じで、良く言えば音場に広がりがあるとも言えそうですが、定位まで散漫になっています。
帯域で効き方に違いも大きく、低音のほうは無い時と変わらず混濁感が残り、高域はスピーカーの周囲にサラサラと散りばめられます。
帯域でいうとV字型に広がっていくような感覚があり、コレを出しているケーブルメーカーの最近の音傾向にも似ているから面白いものです。
分析的に聴いてみると、高域の指向性を弱めるような働きがあり、キツさを抑える働きはするのでしょう。
ただし全体に渡って鮮明ではないので、楽器の分離も良くありません。
音傾向としては一聴すると、音楽性が高まったかのような「錯覚」も受けますし、上品で穏やかな雰囲気を醸し出しているのですけれど、どうも私にはケーブルインシュレーターを使っていない時よりも不正確なバランスになっているように感じられてしまいます。
とりわけ全体に軽くフワフワして地に足の着いていない印象があるため、実体感を伴う重量感、存在感が希薄になるのが最大の欠点ですね。
そしてヒッコリーキューブを試してみます。
ひいき目や相性がないように、あえて他社ケーブルを主体に使ってみたり、音量や電源の入れ直しもせずに交換したのですが、ピアノの一音めから違っていて、良い意味であきれるほどです。
ピアノ右手の小指の音が繊細で転がるように鮮度高く、澄んでいますし、ボーカルにも透明感があって心に響いてきます。
この「音が云々」じゃなく「音楽が心に響くかどうか」というところがヒッコリーの良さじゃないかなと思います。
そこはヒッコリーボードの時からゾッコンなので、多少のひいき目はどうしても入ってしまうのかもしれませんが…。
それでも冷静に「音」を評価してみますと、黒檀がいちばん近かったでしょうか。
あれからキツさを取り去ったような形で、低音も濁らず音階の分解能が上がっています。
また、スピーカーからの音離れが明らかに良くなっていて、単に音をばら撒くだけではなく、空間再現の精度が向上しているのが感じ取れます。
結局、この状態でキープとなったわけですが、この効果は音量が小さくても十分に分かるくらいにあって、もはや外せない…というよりも、何処に増やそうかな?と考えてしまうほどです。
結果的にはHQ-4の圧勝となってしまいましたが、どうやら素材もさることながら、やはり単一の木材を使う場合、スピーカーの時と同様、大きすぎるのはかえって逆効果のように感じてきました。
重量物を支えるのであれば大きくないと設置が不安定になったり、場合によっては割れてしまうかもしれないですけれど、ケーブルはそんなに重いものでもないですし、支えるのにちょうど良い大きさ程度のほうがメリットを享受しやすいようです。
逆に言えば、体積が大きいわりに密度の低いものは、結果としては芳しくない形となりました。
また、素材についても音傾向は当然変わるわけですが、それをイコライジング的に使ってしまうと、全体としての音楽のバランスは崩れることになってしまい、かえって迷宮に迷い込んでしまうことになりそうな印象もありました。
音の傾向を変えるために本来の解像度や音の抜けを悪くしてしまってはインシュレーターがボトルネックになってしまいかねません。
そういう意味では「何も使わない」状態から音傾向がさほど遠くない範囲で、低域の被りや透明感、濁りや曇りを改善するものを選ぶのが、ケーブルインシュレーターでは良いような気もします。
大切なのはシステムや現在の配置の欠点をカバーしてくれる方向性かどうか、という観点を忘れずにチョイスしていくことではないかと感じた次第です。
次回は同じインシュレーターをLINN AKURATE DSの足下に使い、機器のインシュレーターでの効果を比較してみたいと思っています。
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