ACOUSTIC REVIVEの新作インシュレーター「RKI-5005」が届きました。
製品の詳細は前回の記事で書きましたので、今回は実物でのサイズ感やパッケージ、そしてCDプレーヤーで実際に使ってみての感想などを書いてみようと思います。
パッケージの大きさは吊り下げ部分を除くとちょうどCDケースと同じくらいです。
4つのインシュレーターがしっかり収納できるケースも紙ジャケット仕様のCDみたいな雰囲気に仕上がっています。
インシュレーターを取り出してみると厚さ5mmとのことでしたが、使いやすいサイズだなという印象です。
クロロプレンインシュレーター「CP-4」はどちらかというとスペーサーのような感じでしたが、RKI-5005はそれ単体でしっかりしたインシュレーターになっています。
サイズ感としてはJ1 Projectの青丸こと、A50R-J/4Pとほぼ同じくらいです。
上面に相当する部分の凹凸はまさにターンテーブルシート「RTS-30」の縮小版のようなイメージです。
ただインシュレーターに最適化されているそうで、触った感じでもRTS-30より少し硬めになっているような気がします。
さて早速、CDプレーヤーで使ってみることにしますが、現在4台ほどメインシステムに接続している中からAccuphase DP-77で試すことにしました。
理由はこのプレーヤーの鋳鉄製の純正脚がかなりクセが強いという印象があったためです。
以前、ピックアップの動作不具合があった際、検証のために底面の隙間に導通性の布を敷いてみたりしたのですが、この布で鋳鉄部分に触れると出音にその擦れた音が乗って出てきたという経験がありました。
ラックに触れる部分にはフェルトが貼ってあるので、そんな特殊なことをしない限りは通常は影響ないとは思いますし、この機種固有の特殊な事例かもしれませんが。
かと言って、純正の脚を外してしまうというのは保証上も抵抗がある方は多いでしょうし、まさにこういう場面に最適ではないかと。
サイズは純正の脚よりはわずかに小さめですけれど、全く違和感なくキレイに配置できました。
機材の下にはヒッコリーボードを使っていてラックの高さもそんなに余裕はないのですけど、RKI-5005は5mm程度ですから何の支障もなく挟むことができました。
なお試聴に際してはまずRKI-5005を敷く前の状態でしばらく聴いておいて、挿入後との違いを比較する形としました。
まずはヒッコリーボードのみでRKI-5005無しですが、これでもかなり自分なりにセッティングを追い込んだつもりですので、ややピーキーな高域はコントロールできている感じはしています。
空間表現は問題ないのですが、REVOXなど他のプレーヤーと比べると躍動感がやや少なめなのが懸念事項です。
また、音像はシャープなのですが、やや鼻にかかったような音色に感じたり、低域は深みが少し足りず、やや浮き足がちだったり平面的に感じたりするのが不満ではありました。
実際の帯域はそれなりにワイドレンジかつ上品で、オーディオ的な観点ではそこまで不満はないはずなのですが、音楽の楽しさがやや薄めなきらいがあるのでしょう。
続いて、RKI-5005を敷いてみた状態で聴き慣れたハープとフルートのCDを聴いてみますと、第一印象としては「おお、音が前に出てくるな!」と。
ハープの弦の揺らぎのような低域がしっかり表現されていて、力強さがありながら静寂感が高まっています。
それまでは楽譜の上っ面をなぞるように直接音ばかりが目立っていたのですが、RKI-5005を導入してから、静けさの中に楽器が奏者とともに浮き立ってくるようになってくれました。
かといって雰囲気で付帯音が付加されるような傾向ではなく、その証拠とも言うべきでしょうか、音像はむしろ正確さをより増しています。
楽器の配置もただの左右の位置だけが正確な点音源のようなものではなく、より実体感のあるサイズと空気感を伴うものに進化しています。
ボーカルでもやはり音像がリアルで自然なので、心に沁み入ってきます。
特に繊細な奥行き方向の立体感も明瞭に再現されるようになったことと、定位の時間的な揺らぎが格段に少なくなっているのも良い方向への変化です。
混声合唱の位置関係や分離もまるでルームアコースティックが充実したかのように改善してくれました。
ピアノもペダルのリアルさが特筆もので、ここもプレーヤーとしての土台がしっかりしたからでしょう。
全体に低域の振動からの影響を低減できたような印象で、その手の対処に使われがちなフローティング系のものにありがちな、細部が消失してしまうような傾向が皆無であることも大きなメリットだと感じています。
むしろそれぞれの楽器や演者が浮き立つように空間に溢れ出してくるようです。
とにかく楽器の位置関係やホールの空気感が正確になっていて、それには振動だけでなく、機器のシャーシ電位が安定したことも貢献しているのかもしれません。
なによりいちばんの違いは「キンつかない」ことでして、アキュフェーズで良く挙げられがちなスカキン傾向はどうも鋳鉄製の脚に起因している印象が個人的に強いのですが、それを他のアイテム以上に大幅に解消できるように感じられます。
また、CD再生という側面でみると、これまでに体感したことがあるものの中では、同社の消磁器「RD-3」やRIO-5IIなどをディスクに使った際の傾向に似ているでしょうか。
RD-3のリアルなシャープさとRIO-5IIの自然でリアルな空気感が付与されたかのようですし、むしろそれら以上の効果かもしれません。
もちろん再生ディスクにもそれらは使ってありますので、その相乗効果もあるとは思いますが。
RTS-30にも似た方向性なので、あのシートによる効果が気に入った方なら必ず満足を得られるはずと確信を持ちました。
他のデジタル系機材との比較もやってみました。
まずはハイレゾとの比較ということでSoundgenic経由のHP-A8と比べてみます。
ハイレゾとはいえ複合機ではありますが、やや音像が膨らむ傾向が感じられます。
HP-A8も脚はたしかプラスチックでしたから、こういう場所に使うのもきっと良いのでしょう。
REVOX B226Sは全体に古さが目立つ傾向で、ダウンサンプリングされたような感触を埋め合わせるような輪郭強調っぽい音色に感じられます。
RKI-5005導入前まではむしろCD再生ではREVOXをメインにしていたくらいですので、RKI-5005で差が広がってしまったようです。
DENON DCD-1550ARもHP-A8に傾向としては似ていて、これも脚がプラスチックですから改善の余地があるのでしょう。
空間的な情報がやや少なめに整理されたように感じられます。
ここまで聴いてから、再びRKI-5005を導入したDP-77に戻してみますと、余韻の美しさが段違いです。
オンマイクの具合までつぶさに描写されますし、ナチュラルでありながら豊かな表現力で品格と熱量が両立しています。
RKI-5005導入前までは高級感こそあるものの、どことなく平面的でスカした感じが気に入らないところがあったのですが、それまでのキツさが完全に解消しつつ、安定感も増して一気にメイン機の座を取り戻しました。
方向性としては金属製やプラスチック製などの脚にとても効果的だと感じましたし、機器の脚を取り除いたり、配置を変えるなど、大きく手を加えないで良いのがオススメです。
また、ラックや筐体構造も含め、全体にソリッドに固めてある場合により有効な気がします。
私自身、すでに他の機材にも追加導入したくなっていますけれども、そこは追々、他の場所に移してみたりして試していこうと思っています。
ただ今回、機器を弄っての試聴というより、ずっとそのまま聴いていたくなるような安定感と安心感のある想像以上の進化に驚きました。
ラックの高さなどの制限も受けづらいですし、回転系を主体に追加してみるのをオススメできる逸品です。
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