ACOUSTIC REVIVEの電源タップ「RTP-4 absolute」は2015年に一度お借りしたことがありますが、再度2台お借りすることになりました。
理由となったのは先日からのAKURATE DSの無音FLAC再生時の残留ノイズが、どうもクリーン電源起因の要素を含んでいると感じたからです。
もちろん、前回お借りした時に素晴らしいサウンドで、以降ずっと憧れの存在であり、壁コンセントだけ先にGTX-NCFのACOUSTIC REVIVEバージョンに変更していたくらいですから、導入したかったというのも本音です。
その上でこの問題の検証で確信を得たら導入しよう!という形で、その際の構成を意識してまず貸し出しをお願いしたわけです。
さてそんな残留ノイズの件ですが、再度振り返ってみることにしましょう。
Soundgenicに無音のFLACを入れまして、これをLINN AKURATE DS(初代)から再生、C-280LのREC OUTを経てPCM-D100にてフルボリューム,S/N100dBモードにて約20秒ほど録音するというものです。
こうやって録音した24bit/192kHzの音声ファイルをAudacityで50dBほど増幅し、周波数解析に掛けたところ、クリーン電源から給電した際にかなり大きな残留ノイズが見られたというものです。
ノイズは大きく分けて2種類で、ひとつは電源周波数由来の高調波で、50Hzを中心に主にその高調波で構成されていて、電源状態にも多少影響されますが、1kHz辺りまで広範囲に出ています。
もうひとつは20kHz以上の可聴帯域外の高周波ノイズで、これも耳に聴こえないものの、かなり高いレベルで出ているのが確認されました。
もちろんフルボリュームで録音している点、それに目盛りはあくまでも50dB差し引いて読んでいただく必要があるわけですが、さすがにここまで出てくると音にも影響があると言って良いでしょう。
AKURATE DSだけでなくC-280Lもクリーン電源に接続した状態での記録ですから、電源としてはまさにクリーンになっているはずですが、肝心の出音のほうにノイズが出ているのは紛れもない事実です。
AKURATE DSのダイナミック電源や音声回路、そして壁コンセントから分けているとは言え同じ部屋にあるハブやNASなどのLAN環境の影響も当然あると思いますが、それにしても説明しきれないのでは?という不信感を抱きました。
参考までに実際に録音した音声を50dB増幅したものをMP3に落として掲載しておきます。
なにぶんMP3ですので可聴帯域外の高周波は聴き取れませんが、残留ノイズの質感は分かっていただけるはずです。
さて前置きが長くなりましたが、お借りしたRTP-4 absoluteを設置し、全てのオーディオ機器の電源をこちらから取るように変更しました。
1台はアナログ系(プリ,パワー,レコードプレーヤー)、もう一台はデジタル系(CDP,NWP,ヘッドフォン系)という分け方にしてあります。
壁コンセントからの電源ケーブルはACOUSTIC REVIE POWER STANDARD TripleC-FMを双方とも使用しました。
あとはクリーン電源の時と全く同じ電源ケーブル、音声ケーブルを使用し、クリーン電源は電源ケーブルも含め全て外しました。
まずは測定結果から見ていただきましょう。
説明の必要もないと思いますが、電源周波数由来の高調波も全体的に低減していて、可聴帯域外の高周波はほぼ解消されています。
クリーン電源の場合はアース戻しをすれば可聴帯域外の高周波は低減できましたが、RTP-4 absoluteではそもそもアース戻しの必要がありません。
「クリーン電源」という名前から絶対的な信頼を置いていたところがありましたが、残念ながら一概にそうとは言い切れない、むしろノイズを増長する原因になり得ることに気づいてしまいました。
実はこれまでも段階的にいくつか気になる部分はあって、壁コンセントから取っているパワーアンプの電源ケーブルを外すと、フォノのREC OUTにかなり大きなハムが入る、ですとか、稀にフォノ入力でレコードに針すらおろしていない状態でAM放送が混入するといった症状もあり、どうしてだろう?と疑問に思っていました。
パワーアンプも現在はリビングで使っているA-45の頃はクリーン電源から取っていたのですが、どうしても神経質な音になりがちで壁コンセント直に変更しましたし、ヘッドフォン系を分離したのも聴感で音が悪くなったと判断していたからでした。
こちらもMP3にした残留ノイズの音声を掲載しておきますが、ノイズの質感もホワイトノイズ的で嫌悪感のないものに変化していると思います。
以上の結果を踏まえ、Accuphaseのクリーン電源「PS-500」は手放すことにしました。
このモデルが初代で、シャーシにアースを落としていないなど、現行モデルと異なる点や、それぞれの環境でノイズの原因や量、機器のノイズ耐性・ノイズ発生度合いも違うので、これをもって一概にクリーン電源=ノイズ源、悪と取り扱うのは語弊があると私自身も思っています。
また、リジェネレーター方式よりも差分補正のほうが電気回路も小さくて済みますし、PWMなど効率重視の電源回路を取らずにリニア電源を使っている点も個人的には評価しているところです。
それ以外の電源コンディショナーやノイズフィルタの類いも、EMI対策でラジオ帯域などのMHz,GHz帯域をカットする上では有効だと思いますが、今回挙げたような「ハイレゾ音源の帯域」で機器の出音そのものに効果を発揮するという点では一概にプラス要素ばかりではないと考えています。
それでも今回の結果を見て、PS-500をすぐに外したのはサウンド自体が大幅に底上げされたと感じたからです。
これについてはまた後日詳細にレビューしたいと思いますが、NWP,CDP、そしてアナログディスク全てを通して、正直もう細かい指摘など不要なほど、圧倒的な説得力とエナジーで音楽を奏でてくれるようになりました。
実は、AKURATE DSの前にMAJIK DSが最初やって来た時もこれに近い感触があってLINNをチョイスしたのですが、動作確認のため、クリーン電源を通していなかったことももしかすると大きかったのかもしれないな、と思ってしまうほどです。
機材もすでに配置替えを済ませ、あとはRTP-4 absoluteの実力をさらに引き出すのみ、といった状態です。
一点だけ今回挙げるとすれば、ヒッコリーボードの活躍が今回も目立った気がします。
RTP-4 absoluteの下にも使いましたし、ラックの置き場所変更でCDプレーヤー、AKURATE DSの双方にヒッコリーボードが使えたことも音質面では大きなメリットにつながっています。
その辺りの詳細については次回レビューをお待ちいただければ幸いです。
最後に、貴重な比較レビューができる機会を与えてくださったACOUSTIC REVIVE様に感謝申し上げます。
なお製品貸し出しは同社Webサイトから誰でも申し込み可能となっています。
電源タップやケーブルというと、「そんなもので音が変わるの?オカルトでは?」と言われてしまいがちですが、今回の計測ではしっかり出音(といっても残留ノイズではありますが)に変化があることが分かっただけでも大きな収穫でした。
やはり主体は音楽ですから、そちらをしっかり聴いて判断していきたいと思いますが、それだけを過信し過ぎるのも、逆に無視するのも危険だなと感じた比較の機会でありました。
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