Campfire AudioのIEM、3本目のレビューは「JUPITER」です。
チューブレスのクアッドドライバー型IEMというのが特徴的なJUPITERですが、ORIONの1BA、NOVAのフルレンジ2基から一気にドライバが倍増して、価格もぐんと上がります。
なお、JUPITERには他の3モデルと違い、標準装着の「ALO audio製 Litz Wire Earphone Cable – 3.5mm」に加えて、「ALO audio製 Tinsel Earphone Cable – 2.5mm 4極」も付属しています。
発売当初は標準装備のケーブルも「Tinsel Earphone Cable」だったのですが、これが「Litz Wire Earphone Cable」に変更されました。
なお、「LYRA」「ORION」「ORION / Sky」「JUPITER」の初期ユーザーさんには現行モデル付属の「Litz Wire Earphone Cable」を13,000円で販売する措置も8/31まで実施されています。
JUPITERからは革製のケースとなり、ますます高級感が増しています。
サウンドもそれに負けず劣らず、一聴してきらびやかとなり、Hi-Fiな雰囲気となります。
能率もNOVAまでよりもずいぶん高いように感じます。
スペック上はインピーダンスが35Ωと少し高くなっていますし、能率もNOVAと同じ114dBなのですが、音の質感による感じ方の違いでしょうか。
能率が高い分、The Nationalでの残留ノイズもまた少し目立つようになりました。
といっても、ORIONとNOVAでいえばNOVA寄りのノイズ量ですから、ひどく気になるほどではありません。
The Nationalで聴く上では、これまでのモデルから一変して、やや派手な印象もありますが、余韻は美しく、上質な輝きといったところです。
やや暴れ馬な印象こそあるものの、先日、我が家のシステムにAccuphaseの古いプリアンプ「C-200L」を導入した時の感覚に通じるものを感じました。
ワイドレンジ化を実現しつつ、音楽の魅力をあますところなく引き出す方向で仕上がっているのだと思います。
4BAになったことで、スペック以上に帯域の広がりは全くの別世界となっています。
流行りのハイレゾというような方向ではなく、それぞれのレンジをしっかり密度高く再生してくれている印象を受けました。
とにかくパワフルかつ高密度で、ロックなど、力強さを求める向きにオススメできるのではないでしょうか。
ロック向きとよく言われるSENNHEISERのHD-25-1 IIと較べてみても、HD-25-1 IIが穏やかに感じるくらいです。
あえてウィークポイントを挙げるとするならば、中域が他に比べれば薄めというところでしょうか。
また、楽器やボーカルの分離はシンプルなフルレンジモデルの良さもありました。
もちろん、JUPITERでもそれぞれの帯域のバランスはきちんと取れていますが、フルレンジというシンプルさが生み出す明瞭さという点ではNOVAも捨てがたいものがあります。
ここでアンプを同じALO audioのRx MkIIに変更してみることにしました。
すると、ずいぶん印象が変わり、かなり上品な雰囲気に様変わりします。
音に立体的な広がりが生まれ、ヴァイオリンにも艶が出てきました。
とりわけ、管楽器が非常に魅力的で、そこはアンプの特色がJUPITERによって引き出されているのでしょう。
奏者の息遣いもしっかり聴き取れる分解能の高さも含め、JUPITERはRxシリーズのほうが相性は良さそうです。
ただそれでもやはり若干の中域抜けの感はあり、それがスッキリとしたイメージを演出してくれてもいるように感じます。
また、これはRx MkIIに切り替えてからCampfire Audio全モデル通じて感じたことですが、音源をハイレゾにするとグッと音が良くなるのを体感できます。
スペックでいえばハイレゾとは無縁のように思えるかもしれませんが、そんな高域うんぬんではなく、密度が高まったことをしっかりと体感させてくれるイメージです。
特にハイレゾ音源からCD品質に切り替えると、グッと音が濁るのが体感できて、ハイレゾ音源の存在価値を真の意味で高めてくれるIEMのように感じました。
トータルで評価すると、4モデルの中ではやや押しが強めで、ANDROMEDAが登場した今となってはやや選びづらいところかと思いますが、バランスリケーブルが付属していたり、JUPITERなりの音傾向があります。
とりわけRx MkIIとは相性が良かったですから、他のCampfire Audio製品がやや地味に感じる方には一度、JUPITERの試聴をオススメしたいところです。