茶楽音人さんの新しいイヤフォン「ちょんまげ3号」を少しの間お借りすることができましたので、レビューさせていただきたいと思います。
これまでDonguriシリーズを何度かレビューさせてもらいましたが、それとは微妙に異なるパッケージングではありますけども、基本的には(お茶缶も含めて)同じような梱包・同梱内容です。
ただ、ちょっとした切り絵が凝っていたりと、ちょんまげ形状になかなかのこだわりを感じるパッケージングとなっています。
おなじみのハイレゾ対応のロゴもしっかり付いています。
さてイヤフォン本体ですが、質感は正直高級感があるというわけではありませんが、仕上がりは丁寧です。
特にハウジング部分が材質上、どうしてもプラスティックっぽい感じになるわけですが、ちょんまげの構造を実現する上でも、ある程度仕方のないことかと思います。
まずは手始めに軽くiPhoneにつないで聴いてみましたが、本体が結構軽めなせいか、付け心地は良好です。
ただ、これまでのDonguriシリーズとは音傾向がずいぶん違って驚きましたし、iPhoneでは正直その実力が裏目に出てしまうようです。
具体的には楽器の響きが少なく、中低域以下が軽いために、iPhoneの音の悪い傾向が露わになってしまいます。
そこで我が家のポータブルではフル構成となるiPod nano/iPhone 4にCypher LabsのAlgoRhythm SoloをDAC、そしてポタアンはALO AudioのRx Amp MKIIで試してみました。
こちらだと響きも自然でありつつ、低域が分厚いので、音楽全体に重厚感が出てきます。
この時点ではまだエージング不足なのもあって、やや中域は濁りが出ているようにも思えますし、中高域が固い印象がありましたが、聴きこんでいくうちにその印象は薄らいでいきました。
Donguriとの比較はまた後日やってみたいと思いますが、もっとhi-fi寄りの音作りで、F特も響きもナチュラルな傾向です。
やや中低域が薄めに味付けされている感はありますが、弦楽器や管楽器では実在感があり、静寂感も良く出ていて、余韻がよく伸びています。
中低域の薄さに関しては標準イヤーピースのSpinFitによる部分もあるかもしれず、コンプライに変えると違ってくる可能性もありますが、今回は試していません。
ただ全般には「高級オーディオスピーカー」っぽい音傾向で、Donguriがやや楽器のようなクセを伴うものに対して、ちょんまげ3号は正統派のオーディオ機器という印象です。
また、これまで耳にしたことがある高級IEMや据え置きオーディオ的な音表現になっているように感じる場面も多く、前述のとおり、かなりhi-fi志向が感じられます。
それだけに、再生機材の音質にもシビアになっているのでしょう。
こういった傾向のため、これまでの茶楽音人の得意分野だった音場表現とピアノ、ボーカルはやや一歩後退させて、その分を「純度」に回した感があり、そこはこれまでのシリーズが好みの方には「あれ?ちょっと違う」と感じさせてしまうかもしれません。
こう書いてしまうと、いかにも凡庸な高級イヤフォンになったように聞こえてしまうかもしれませんが、もちろん実際にはまとまりがよく、優等生な仕上がりです。
ある程度、エージングを進めていくと、重低域の充実感から音に厚みがあり、ボーカルのほうにも実体感が出てきました。
逆に機材のホワイトノイズが目立つほど、モニター的な性能の高さをうかがわせてくれます。
ちなみにノイズ対策にゲインをローにしてみましたが、そうすると今度は低域の厚みが失われて、平面的になってしまいました。
これも「ちょんまげ3号」による音傾向ではなく、どちらかというと再生機材が試されていると言ったほうが良いのでしょう。
さきほども現代的なスピーカーシステムに似た音傾向と書きましたが、なぜかツイーターがあるような鳴り方だと感じるケースがありました。
女性ボーカルでは金属ドームツィーターを使ったスピーカーのような硬さが感じられ、よく言われるサ行が目立ってきつく感じることもありましたが、それがまさに他のIEMと似た音傾向を感じる部分でもありますし、低域と高域の音傾向の微妙な違いを感じさせたところでもあります。
オーディオ的感覚では非常に満足度が高いのですが、反面、音楽的な観点で捉えるとDonguriに比べてやや物足りなさを感じる場面があるという、相反性がありました。
もっと簡単に言うとすれば、聴き入る感じにならず、粗探しの試聴になりがち、といったところでしょうか。
それだけモニター的な傾向になったのだと、私は捉えています。
ここで趣を変えて、もう少し気楽に、いろんなジャンルの音楽を楽しんでみることにしました。
すると、ロックテイストの楽曲ではキレの良さが際立ちますし、ジャズでも存在感があり、躍動するサウンドを楽しむことができます。
不思議なことに最近のややコンプが掛かり気味の楽曲のほうが、むしろダイナミックレンジが広がり、細かい音が引き出されて良好な印象を受ける傾向がありました。
その点では古い音源のクラシックやピアノソロといったジャンルよりも、最新のロック、ジャズ向きな傾向があるのかもしれません。
音の定位感についてはやはりDonguriとはずいぶん違っていて、どちらかといえば明らかに密閉型に近い定位の仕方です。
耳への装着感は良く、外来ノイズも耳に入ってこないので、前述のように機材の残留ノイズもしっかり分かります。
また、ケーブル構造によるものか、アンバランスケーブルでもセパレーションがかなり良いようです。
最後にあえてまたiPhone 5s直挿しにしていろんな楽曲を聴いてみました。
エージングが進んだおかげもあり、意外に低域と中域のバランスが良く、爽やかな傾向になってきました。
ただし、低域の薄さがモロに分かってしまう点だけはいかんともしがたいものがあります。
特にピアノは美音ではあるのですが、平面的な表情に終始してしまいます。
正直、今回の「ちょんまげ3号」はiPhone直挿しでは本来の実力が活かせないと思います。
そこも表情でそれなりに聴かせてくれるDonguriとは性質を異にするところではないえしょうか。
全般的にはこの価格帯でかなり上位クラスのIEMに勝負を挑むような音傾向と情報量が魅力の最新イヤフォンといった印象です。
とりわけ、最近のビートの効いた楽曲に向いていると思いますし、最新のハイレゾ機材との組み合わせにはかなり良い選択肢なのではないでしょうか。
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