MacBSの日常生活的日記

CHORD Mojo レビュー 導入編

ポタアンにヘッドフォンを強化したところで、ポータブルオーディオプレーヤーに使っているiBasso DX90にやや不満(音質面もですが、バッテリー寿命や音途切れとか…)も出てきました。
そこで次期DAPを検討していたのですが、この分野は進化と高騰も激しくてコレという候補を決めきれずにいました。
そんな中で以前から気になっていたCHORDのポータブルDAC「Mojo」に手を出してしまいました。

導入した理由の一つは以前からWTAフィルタとパルスアレイDACというところに技術的興味があった、というのがあります。
一応、過去にデジタル音声信号処理をかじった身でもあり、FPGAで組めば良くなるという単純なものでもないだろうけどなぁ、という半分疑いの目(耳?)も持っていたところがあります。
反面、据え置き機も含め、汎用DAC(とオペアンプ)の型番ばかりが踊るスペックというのも面白みに欠けるものがあり、Hugo2登場前後で価格が落ち着いてきたこともあって試してみようということに。

もちろん、DX90からデジタル出力して強化できる点や、iPhoneやMacBookにも接続できるという用途の多様さも導入した理由の一つです。
iBasso DX90についてはonsoの3.5mm2極同軸ケーブルを同時購入して対応しました。

onsoっていう名前は見かけてたんですが、ひさご電材のブランドだったんですね。
それなら安心感もありますし、お値段もわりと手頃で実際使ってみても動作や接続具合も安定していてオススメです。

またキャンペーンでDignisのケースも付いてきました。
オマケ程度に考えていましたが元々かなり高級なものでもあり、質感も良いですし熱対策も施されていて、中古じゃなく新品購入して正解でした。

まずはiBasso DX90の同軸デジタル出力からMojoに入れ、そこからALO audio Rxに…という三段構成で鳴らし初めです。

まず驚いたのはディテールの再現力が非常に高い点です。
楽器の分離が良いというのは良く言われる表現ですが、ホントに些細な音まで逃さず分離されてきます。
それでいて聴感上の情報量は過剰に多くなり過ぎず、音楽の世界観に没頭させる鮮度を甦らせてくれる印象です。
鮮烈さよりもむしろ穏やかな雰囲気を大切にしてあって、そのせいもあり、ついつい音量を上げ過ぎるので要注意です。

Rxを外してMojo単体でも鳴らしてみましたが、低域の駆動力がやや不足しているかな、と感じました。
音量としてはむしろRxよりパワフルなので出力としては十分なんですが、ヘッドフォンからの逆起電力の影響を受けやすいのかもしれません。
噂通り、Rxとの相性は抜群で、Rxのゲインの少なさを補ってくれつつ、有機的な温もりがRxで付加されるような形となります。
RxもALO audioとしてはドライなほうだと思いますが、それでも効果的に相乗効果が得られているようです。
DX90に比べるとMojoでは歪み、ノイズが圧倒的に少ないですし、その差が良い方向に作用していると思います。
とりわけこの組み合わせで聴く際の、低域で空気の動きを感じるような感覚はポータブルでは初めての体験です。

音の広がりに関してはヘッドフォンとの相性もあると思いますが、B&W P7で聴く限りではそれほど広大なほうではなく、どちらかといえば箱庭的に展開されます。
その分、独特の密度感があるもので、今まで気づかなかった曲の中の音世界を改めて知る場面に多々出会いました。
ギターなど弦楽器で弦の揺れ具合や微妙な指使いが伝わってきますし、ピアノ、ボーカル、どれを取っても非常に高い満足感が得られます。
オーディオ的な観点では高域の表現が非常に豊かで、ガラス質や金属的なキツさがなく、かといってシルクのようなベールもなく、素通しの感覚に他を圧倒する異質さすら覚えるほどです。

iPhoneにはLightning-USBアダプタ経由で接続したところ、こちらも期待以上の効果です。
このために眠っていたiPhone 5sを音楽用に復活させましたが、容量が32GBと限られることもありますし、DX90のハイレゾ音源と分ける意味合いもあり、AACなどの圧縮音源もそれなりに入れました。
その辺りは「まぁ聴ければ良いかな」程度に考えていたんですが、いやいやむしろこちらのほうが新たな感動が多かったほどです。
実はその前にiPod classicも引っ張り出してきて一時復活させてみたのですが、正直もう出番はないなと感じました。

そんなこんなで懐疑的なところもありながら導入したのですが、結果的には非常に満足感の高いポータブルDACでした。
必ずしも最新のDACが良いとは今でも思っていないところがありますけど、FPGAで理想を追求するポリシーと、その独特の世界観は予想外に(失礼)共感できるものです。
私などが言うのもおこがましいですけれど、PCMの理論に沿ってきちんと量子化誤差を畳み込まれたデータを可能な限りの資源でできるだけ復元する、という理想をしっかり具現化していますね。
その効果もあって16bit/44.1kHz音源も非可逆圧縮音源でさえも本来に近い姿に整えられています。
とりわけ、PCMにありがちなフォルテのほうが精度が高く、ピアニシモが濁るというところがない点が、他のDACと大きく違う印象を与えてくれる理由のひとつのような気がします。

これがリアルサウンドかというとタイムドメイン方向の再現を目指すものではないですし、好みもあるかと思いますが、少なくともポータブルでこのレベルを実現しているのですから、人気の高さには納得でした。
これを聴いてしまうとHugo 2はもっとスゴいのかな?とか、据え置きにDAVEを入れたらどうなるんだろう?などと気になりますが、そこはあんまり最新を追わない私ですので、試聴の機会があれば…くらいにしておくだろうと思います。

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