Phile-webさんにお借りしたDENONのポータブルUSB-DACヘッドフォンアンプ「DA-10」ですが、初期不良ではないかということで交換貸出と相成りました。
貸出機と言っても発売前の試作機ではなく、製品版ですのでレビューとしてはそのまま掲載しておきますが、改めて交換貸出されたモデルでレビューしてみます。
まずは肝心の「本体に衝撃があった場合に(主に左の)音が途切れる」現象ですが、今回のでは全く発生しませんでした。
そういう意味ではやはり初期不良だったのだろうと思われますが、原因がハッキリしないと少し時間が経ってから他の個体でも多発する可能性もあります。
最初の個体は返却後、DENONで調査して報告いただけるらしいので、そちらを待ちたいと思います。
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(10/31 19:00追記)
DENONからの報告がありましたので、記事にしました。
詳細は以下をご参照ください。
・DENON DA-10、不良箇所判明
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また、個体差についても気になるところですが、率直なところ、かなり個体差があると感じました。
まず他のユーザーさんの一部で報告のあるギャングエラーですけども、今回の個体では9時半くらいまでギャングエラーがあって、左がやや小さめです。
といっても電源オンにして音量最小の位置というのが8時くらいですので、よっぽど高能率のイヤフォンでなければ、この位置で聴くことはないだろうと思いますが。
それとこればかりは再検証ができないのですけど、届いた当初、ギャングエラーのある辺りで若干ガリオームがあったような気がします。
その後、すぐに消沈して追試できなかったのですが、ボリュームの品質にも個体差があるのかもしれません。
そして肝心の音のほうも最初のとはだいぶ違って、今回のは少し上品なまとまりで、全体のバランスも落ち着いています。
簡単に言えば「最初の個体よりはだいぶ音が良い」わけですが、そもそも同じ製品版でそんなに差があって良いのか?という疑問もありますが、初期不良の原因次第ではありうるのでしょうか…。
まずは動作確認も兼ねて、パワードスピーカーにつないでみましたが、普段、これはiPod Classicを直結で聴いているのでそれに比べたら格段の変化でした。
愛犬に聴かせる用なんですけども、その愛犬も「なんだかいつもと違うなぁ」という感じをしつつも、心地よく眠っていましたからきっと心地よい音だったのだろうと。
厳密に聴けば小口径のパワードスピーカーでも微細な音が聴き取れていて、ある種、エキサイター的な要素が働いているのかな、とオーディオマニア的には感じました。
前回も書きましたが、ポータブルといえど私が求めているのはそういう音作りではないので、少々物足りないところがあります。
ここからはSHUREのイヤフォン、SE215に移して色々なジャンルのロスレス音源を聴いていきます。
解像度は高めですが、さきほども感じた「やや輪郭が強調された」印象は残ります。
音質自体は最初の個体よりはかなり良くて、音のバランスもだいぶ自然ですし、音源のSNや余韻などが細やかに聞き取れます。
ピアノに関してはどうもやはりやや苦手気味のようで、打鍵のアタック音が目立ち、不自然な付帯音が気になるケースがあります。
特にピアノ独奏に近い楽曲だと、細かい音まで聞こえるというより付帯音が耳につく感じが拭えません。
中高域にややクセがある印象ですので、カナルとの相性が悪いケースがあるのかもしれません。
逆に、元気良い感じの楽曲はノリよく聴けますので、ロックやポップス寄りで音数の多いもののほうが得意でしょう。
多少、楽曲のスピード感やキレを演出気味なところがあって、優しい耳辺りとか和みを求めようとすると、「ちょっと若い音過ぎるな」と感じてしまう一面があります。
高低のバランスという点ではやや下が強めのバランスですが、高域は伸びやかさに欠けますし、中低域は厚めに聴かせますが、最低域はやや伸びきっていない傾向です。
次は前回試していなかったパソコンへの接続で据え置きUSB-DACとしての試聴です。
Mac miniに付属のmicroUSBケーブルで接続し、Audirvana Plusで再生してみました。
ここもmicroUSBという端子は充電ケーブルの都合などもあるのでしょうが、オーディオ用USBケーブルの充実度がまだまだですから交換が楽しめないし、強度面でもやや不安があります。
そもそも標準添付のUSBケーブルはパソコンとの接続を考えるとやや短い(43cmくらい)ので、ノートパソコンでは良いかもしれないですが、デスクトップでは背面まで回せないケースも出てくるかと。
なお、DA-10のボリュームを絞りきってしまうと電源オフになって認識されないので、FIXED出力であっても、あらかじめボリュームを回して電源を入れておく必要があります。
Audirvana Plusでは問題なく認識され、Direct Modeにも対応していますし、DoPでDSD再生もしっかりできました。
あえてPCM変換と比較してDSD音源を聴き比べてみましたが、音に立体感に若干の違いはあるものの、正直、僅差だと感じます。
まずその前にFIXED出力での音量が相当小さいのにびっくりします。
仕様ではFIXEDで700mVなんですが、最近のデジタル機器は大抵2V程度ですし、もう少しそれに近づけられなかったのか、と思います。
音量の問題はプリアンプ側のボリュームを上げれば一応解決しますが、音量を上げていってもどうもモワモワとしたハッキリしないもので、普段聴いているATOLL DAC100と置き換えたくなるようなレベルでは正直ありませんでした。
特に低域が一昔前のパルプコーンウーファーのようなカサカサした低域で、それこそiPodか何かを無理やりオーディオ機器につないだ時のような内容で、DSDうんぬん以前のレベルです。
こうなってしまった原因の一つはケーブルにもあると思われて、しっかしたケーブルで接続されているATOLLとは違い、DA-10のほうは手近に転がっていたステレオミニ-RCAの安物ケーブルでの接続だからというのもあると思います。
そもそもDA-10にはこのステレオミニ-RCAケーブルが付属しませんし、やはりヘッドフォン端子と共用で、ステレオミニジャック出力というのは据え置きオーディオ的に不満が出る部分かと感じます。
実売4万円で主目的はポータブルなのでバッテリー等を搭載していることを考えると、据え置き機としては2万円台クラスとの競合でしょうから仕方ないとはいえ、DENONのHi-Fiを語るには少々物足りなさを感じた、というのが正直なところです。
音質面では価格帯も違う機種との比較で多少シビア過ぎる部分もありましたが、メーカーサイトのアピールに期待したからこその落胆という面もあります。
何より個体差や品質部分での不安というのが音にも影響しているのではないか、という懸念もあります。
ユーザーにとっては購入すれば少なくとも数年は愛用し続ける「相棒」になるわけですから、試聴時や購入時のセールスポイントにとらわれ過ぎず、長く愛着の持てるモデルに仕上げてほしいと切に願います。