DENONのCDプレーヤーばかり入手していますが、今回はDCD-1650SRを入手してみました。
これまでDCD-1550AR、DCD-1650AR、DCD-S10IIと入手してきましたけれども、今回のは2002年といちばん新しく、1650シリーズではCD専用機最後のモデルとなります。
DCD-S10IIILと同様、デンオンからデノンに変わった後でもありますね。
その後の1650はSACD機となったのはご存知のとおりかと思います。
AZ以降はDACチップがPCM1704(それ以前はPCM1702)になりましたが、S10シリーズとは違ってデジタル入力はないのは若干残念なところです。
また、SRからはピックアップがそれまでのSHARPからSANYO製に変わっていて、ドライブとしての信頼性は正直あまり良いとは言えないようですが、こちらも互換ピックアップはまだ入手しやすそうです。
実際、使っている間も稀に読まないことがあったり、CD取り出し後の挙動がSACDハイブリッドのドライブに似ていたりする印象があります。
DCD-755シリーズ辺りと同じメカみたいですし、そこはコストダウンでもあったのでしょう。
まずはメインシステム側でDCD-S10IIと入れ替えてしばらく使ってみましたが、音は忠実度、高精度さが高まった印象で細部の描写を重視した感じを受けました。
AL24 Processingに変わったことも影響しているのでしょうが、音作りの方向性もちょっと変わったのでしょう。
小音量でも上品に美しく描写され、音像もよりシャープになりましたし、以前のDENONで特徴的な中低域もそこまで厚めにならず軽快で爽やかな雰囲気にまとまっていて、近年の機材に近い味付けに感じられました。
ただ音楽として楽しめる感覚は失われておらず、神経質になり過ぎずに気分良く聴き続けていられるのは魅力的です。
あと、1650SRからは可変出力がなくなり、ボリュームはヘッドホン専用になりました。
内部を見る限り、そこまで凝ったヘッドホンアンプではなかったですけれど、HIFIMAN Edition Xで聴いた印象ではわりとしっかり鳴ってくれるなぁという印象です。
RCA側も可変出力がなくなったことで回路や取り回しもスリムになっているはずです。
オペアンプなども1650シリーズにしてはわりと新しめのものに変更(たぶんAZから)されていて、そのあたりも音傾向の変化につながっていることでしょう。
基板のネジを割愛するなどのコストダウン傾向は若干減っているようですが、ドライブカバーのような銅板のネジは減らしてあって、そこらはAZあたりからの傾向みたいです。
また、今では高価で入手すらしづらいPCM1704を4つも使っていますけれど、上からは見当たらないので裏面実装なのもAZと同じようです。
次は手持ちのDENON機と比較してみます。
1650ARは良く言えば穏やかですが、全体に重苦しく鈍重に感じられる傾向で、喩えるならば腰の辺りが太いような感覚があります。
楽器の音色はふくよかで実在感があるようでもあって、これが好みにハマると他では得られない魅力ではあるのですけどね。
ALPHA ProcessingからAL24 Processingに進化して、SRではハイレゾ方向への補間のような感触であるのに対して、ARはやや脚色が感じられます。
特に余韻などの微小な部分をARでは一旦割愛して独自に添加するようなところがあるように思えるのですが、SRではその印象は薄く、もっと素直でハイレゾ寄りにやや高域方向にそうした操作をシフトさせたのかもしれません。
ARのそれはぴったりハマると至上の満足感があるのだけれど、思いっきり外れることも結構あるので、汎用性はSRのほうが高いでしょう。
上位モデルとなるDCD-S10IIとも比べてみました。
S10IIと比べるとやや硬さとドライさが感じられます。
筐体の弱さからか、先ほどのARとの比較時とは違って中高域に濁りも感じられますし、音の重心もだいぶ高域寄りになる印象がありました。
ただ、かなり全体としてはクリアで、押し出しはしっかりした元気なサウンドです。
またフルートやハープの倍音がしっかりと透明感を持って伸びていたり、ヴァイオリンの音色がとても自然で、このあたりはS10IIを含めた以前のモデルだとやや誤魔化されている感があったので、そこは良いところかと。
ピアノは右手側が少し鼻にかかるようなところがありますが、左手は音階も掴みやすく濁りが少ないです。
オーケストラなどの大編成になってもごちゃっとならず分離が良いです。
音色的にAccuphase DP-77に寄った感じはあるものの、ある意味、DCD-S10IIよりSRのほうがメインシステム向きかもしれません。
そんなAccuphase DP-77とも比べてみましたが、DP-77はよりゴージャスな風合いですけれども方向性は似ているでしょう。
ヴァイオリンの音色はやや弓の擦れ音が目立つ傾向ですし、ピアノもホールトーンが強めで、むしろDP-77のほうがナチュラルというより色付けされたサウンドだと感じるくらいです。
1650シリーズはコストパフォーマンスが高めの印象を受けていましたが、SRはより現代的で癖が少なめですから、万人受けしやすそうです。
空間表現が正確かつ豊かで不用意に付加されるのではなく、本来音源に入っているものを自然に引き出すのもなかなか好印象です。
ある種の超解像ではあるのですけど、24bitで余裕も出たでしょうし、メーカー側も扱い慣れてきたというのもあるのかもしれません。
DACもPCM1704投入で変換精度も向上したおかげもあるでしょう。
デノンになって以降ということもあり、低域側があまりごちゃつかず、豊潤さや煌びやかさは控えめなものの、上品にまとめてあるバランスの良さも好みにハマったのかもしれません。
「Vivid & Spacious」を謳うのはもっと後年になってからですが、その方向性の変化は感じ取れる気がしましたし、電源部も含めてまだコストを投入できた時代の製品という感触です。
それだけにドライブ部分の弱さがやや残念なところで、そこを求めるならば評価の高いDCD-S10IIILを狙うべきなのかな。
ただ、いずれにしてもSHARP製メカになる程度ですし、メカはいずれ寿命が来るものですから、上手く手入れしながら愛用していこうかと思っています。
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