茶楽音人のカナル型ヘッドホン「Donguri-楽(RAKU)」の数量限定スペシャルバージョ「 濃茶」ですが、そろそろエージングも進んできたので音質について触れていきたいと思います。
いっしょにお借りした「Donguri-鐘」や手持ちのSHURE SE215、ortofon e-Q5と比べながら聴き進めていきました。
以前にはDonguri-楽のオリジナルモデルもお借りしましたが、基本的にはそれを踏襲して低域のボリューム感を厚くした感じですね。
楽は中低域がやや太鼓のように響いて独特の音場を作り出す部分がありますが、その太鼓の大きさが一回り大きくなったような印象です。
鐘と比べてしまうと、高域の抜けの悪さは多少ありますが、サウンドそのものには素直さがあり、横方向への音の広がりはむしろ楽のほうがあるくらいです。
さきほども書いたようにハウジングの箱鳴りをより積極的に活かす方向で、音量を上げると実際に装着した耳の付近でハウジングが振動しているのが分かって、これも躍動感を体感するような絶妙な要素になっているのだと思います。
この箱鳴りさえ良しと感じるなら、鐘よりも楽のほうが楽しめるのではないかと思えるほどです。
エージング前は中高域にキツく感じる部分がありましたが、鐘よりもエージングに時間は掛からない印象で10数時間で落ち着いたバランスの良いサウンドになりました。
低域もブーミーな感じではなく、いわば胸板が厚くなったようなタフネスなものになる印象です。
SHURE SE215と比較してみると、SE215は耳の奥で鳴っているような雰囲気が強く、ナローレンジの中でバランスを取っていると感じる部分があります。
そこから楽に戻せば情報量は圧倒的に優っていますし、それでいてDonguriの音場が活きていて閉塞感が少ない、というDonguri形状の良さが相乗効果となっています。
一応、密閉型という位置づけですが、ハウジングのおかげとDonguriのリアキャビネットの先にある空気抜きの穴のおかげか、開放感があります。
ちなみに音漏れに関してはカナルのイメージからすると多少ありますが、屋外で困るほどのレベルではありません。
DAPもいろんなパターンで試しましたが、iPhone 6 Plusや7th iPod nanoなどの直挿しがある意味、最適かもしれません。
もちろんポタアンを使えばそれだけ潜在能力が引き出されていきますが、低域の厚みも手伝って直挿しでも「聴ける」バランスで鳴ってくれるという点は手軽さの点でも非常に魅力的です。
音源については非可逆圧縮音源でも楽しく弾む感じで音楽自体は生き生きとしたものですが、分解能はやや低く、それぞれのパートが多少雑然とする印象はあります。
鐘のほうはこういった音源でもパート自体はしっかりと分離し、その代わりに「音質が悪い」というのが明白になるような方向性なんですが、そこもチューニングが大きく違うと感じるところです。
全てのDonguriを聴いたわけではないですけど、「らしさ」が強いのはむしろ濃茶のほうではないかなと。
多少の思い込みもあるかもしれませんが、全般にスピーカーっぽい表現が個人的に好みで、濃茶はさしあたり、高域がソフトドーム、低域が16cmのポリプロピレンコーンのリアバスレフのトールボーイみたいな雰囲気です。
音源の種類でいうと、クラシックでは艶があり分解能もさきほどポップスで感じたほど気にならなりません。
こちらはロスレス音源だからというのもあるのでしょうし、ライブレコーディングでは残響表現がほどよいから、というのもあるかと思われます。
とりわけピアノのライブ録音では、ふと目前から部屋の残響が聴こえたような気がしたほどの自然さを体感できました。
どうやら濃茶はある意味、「楽としてのひとつの完成形」なのではないかと思えてきます。
言い方を変えるなら「楽 Ver.1.5」といった具合ですね。
特にカジュアルに直挿しで聴きつつも、あと一歩、音楽を本格的に楽しみたいイヤフォンが欲しい方にオススメです。
ただ独特の音場感は伴いますので、イヤフォン中心に聴いてきた方は一度試聴したほうが安心かもしれません。