フィデリティ・リサーチのMCカートリッジ「FR-2」を入手してみました。
FRというとトーンアームが有名ですけれど、創始者の池田氏はGraceの出身ですし、その後はIKEDAを興したわけでカートリッジでも大きな成果を残した方です。
これまでも気にはなっていたのですが、意外と出物は少なく、出ていてもFR-1やシェル一体型のFR-7のシリーズが多いかと。
今回のFR-2は通常のシェル独立タイプながらIKEDAに移行してからのモデルの雰囲気をやや感じさせるものです。
まずは手元にあった適当なヘッドシェルとリード線で動作確認です。
なにせ1979年くらいの発売ですから、ずいぶんな年代物なのですけども、スタイラス等の状態はなかなか良さそうです。
針圧は1.5〜2gとなっていますので、ひとまず1.8gに設定してみます。
空芯コイルで出力電圧も0.1mVとわりと鳴らしづらいほうのカートリッジですが、C-280Lのヘッドアンプならまぁ大丈夫でしょう。
内部インピーダンスは6Ω、負荷抵抗は10Ωと規定されていますので、最初は10Ωで受けてみます。
一聴して感じたのは楽器の音色が自然で鮮度高く感じる点です。
とりわけ10Ω受けの場合にそれが強まります。
ただ細かな反りなどの影響を受けやすいのか、ちょっとしたトレースの状態変化でブレるような印象がありました。
角度や針圧で出力電圧がやや変化しやすいのかもしれません。
100Ω受けだとトレースによるブレは減って安定感は出ますし、低域の厚みも増しますからリード線などの見直しも必要なのかも。
ただいずれの場合もこれまで使ってきた他のカートリッジとはずいぶん違う印象で、世代的にやや古めのアナログ盤を再生していると特に強く感じられる気がします。
針自体は0.3×3milラインコンタクトですけども、その当時らしい音色が引き出せている感があります。
といっても決して懐古趣味的ではなく、鮮度が高く、それでいて爽快で見晴らしが良いサウンドなのは空芯コイルなのも効いているでしょう。
これまでの手持ちのカートリッジよりかなりボリュームを上げないと音量が確保できない感じですが、これは純粋に出力電圧相当です。
ちなみに普段遣いのカートリッジ群でいいますと、ZYX Ultimate 100が0.24mV、Accuphase AC-2が0.18mV、Lyra Helikonが0.5mVです。
これまで使った中ではortofon MC20が0.07mVで、これもヘッドアンプやMCトランス次第だった印象があります。
ただFR-2は音量こそ取りづらいものの、音はガツンと前に出てくる印象で、他のMCカートリッジとは少し性格が違うようです。
また音量を上げてもノイズがとても少なく、鮮度の高い音色と相まってついついボリュームが上がりがちになります。
Grace F-8Lもそうでしたが、スクラッチノイズを目立たなくする工夫が施されているところもあるのでしょう。
特に違いが目立つのがピアノです。
アナログレコードにとっては苦手な楽器だと思うのですが、打鍵のパルシブさと精度が他にない魅力を感じさせます。
録音された、というより生に近い音色なのは空芯の効果なのか、他のカートリッジよりもレスポンスが良い気がしますし、過渡特性が良いような感覚があり、歪みも少ないようです。
スタイラスが小さめなのでサーフェスノイズも少ないことや、エコーや内周歪みが少ないことも効いているのかも。
ちょっと寒い時期なのでレコード自体の再生時間があまり確保できてませんが、しばらくはFRでいろんな盤を聴いてみたい!と思わせてくれるカートリッジです。
針カバーがちょっと使いにくいとか、細かなところはありますけど貴重なものですし、他のカートリッジ同様、大事に愛用していこうと思います。
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