OlasonicからNANOCOMPOシリーズ第3弾となるUSB-DAC「NANO-D1」が正式発表になっています。
と言いつつ実はこれは予約投稿でして、少し前にNANO-CD1といっしょに試作機をお借りしていましたので、その時の感想を書いてみようかと。
なお今回もお借りしたのは試作機ですので、製品版とは微妙に異なる場合があります。
またレビューにあたって試作機をお借りするという貴重な機会をいただいていますが、報酬等はなく、あくまでもオーディオ好きの一個人として、出来る限り公正にレビューさせていただきます。
まずは簡単なスペックを書いておきますと、いわゆるUSB-DACという部類になるわけで、第一弾のNANO-UA1からスピーカー用のアンプを取り去った、という構成です。
その分、USB-DDC機能は24bit/192kHzまで対応(Windowsは専用ドライバ使用時)ですし、ヘッドフォンアンプも強化されています。
セットアップから始めていきますが、私はいつものようにMac miniで動作させましたのでドライバはOS標準ドライバでOKですから、あっという間に設置完了です。
Audirvana Plus上ではデバイス名として「SPDIF Output」と表示されていましたが、この辺りは製品版では変わっているかもしれません。
また、NANO-UA1の時はデジタルボリュームが「DAC only」になっていると再生できないという問題がありましたが、NANO-D1のほうでは問題なくDirect ModeももちろんOKでした。
なお、USB 96kHzというモードもあり、こちらだとWindowsでも専用ドライバ不要で動作可能です。
また、NANO-UA1との使い勝手の上での大きな違いとしては、本体のボリュームがRCA出力にも連動しているところがあります。
いわゆる可変出力になっていて、USB-DACとしてだけではなく、プリアンプ的な用途を想定しているのだと思われます。
試作機はRCAの出力電圧はそれほど高くなく2Vrms程度だったのですが、これは製品版では7.5Vrmsになるとのことです。
ボリューム自体はNANO-UA1譲りの滑らかで感触の良いもので、可変出力に抵抗がなければ良質で良い出来だと感じました。
さてセッティングはこの程度にして、早速音を出してみました。
なお、うちの環境は以下のとおりで、これにNANO-D1とNANO-CD1を追加しての試聴となりました。
DDC : JAVS X-DDC
DAC : ATOLL DAC100
Amp : LINN MAJIK-IL
SPK : DALI Royal Menuet II
まずはオーソドックスにNANO-D1をMac miniにUSBで接続し、USB-DDC込みで聴いてみます。
NANO-UA1の時の印象に近く、全体的にドライでありつつも音源の情報をしっかりそのまま引き出すイメージで、Olasonicらしい真面目さが伝わってきます。
アンプ以降がいつも自分で使ってるシステムなだけによりDDCとDACの性能がしっかり聴き比べできるわけですが、普段のシステムと比べると低域から高域まで強調されてるところがなく、きわめてフラットです。
X-DDCもATOLLも華やかさが少し華美に付随してくる傾向があるので、それが良好に働くケースもあるのですが裏目に出ることもままあるんですよね。
その点、NANO-D1のほうはジャンルや音源を選ばず、自然体でフレッシュに聴かせてくれます。
ただ、もう少し欲を言えばDDC部分にいわゆるPCオーディオ臭さが残っていて、ジュワジュワっとしたジッターの影響っぽさが残るところがありました。
この辺りはパソコン側のUSB品質などの影響もあるので、一概にNANO-D1側の問題とも言い切れないのですけどね。
その点を検証するために今度はX-DDCからNANO-D1の光入力に入れてDACだけを使う形で鳴らしてみました。
すると、さきほどまでよりは音像が明確になってデジタル臭さも抜け、底上げされたような印象を受けます。
とりわけ中域から中高域にかけての情報量が多いNANO-D1の良さが活きてきて、収録された際の艶めかしさが再現されたような印象さえ受けます。
普段のATOLLと比べると余韻は少なめですが、NANO-D1のほうがわざとらしい「あざとさ」が減って、こちらのほうを好ましいと感じる方が多いかと。
素直なだけに艶や余韻は音源なりの分量ですが、そこはアンプ以降の出口側で音作りするのが本来望ましいはずですし、さきほども書いたとおり、ジャンルや音源を選ばずに聴けるためにはこのほうが良いでしょう。
最低域の伸びや音場の豊かさはATOLLの得意とするところなので一歩譲る感はありますが、中低域の締りの良さやタイトなシャープさとも表裏一体ですし、この辺りも好みの領域でしょう。
せっかくの192kHz対応ですから、ハイレゾ音源も試してみました。
こちらもいつもの環境との比較をしましたが、ハイレゾでも傾向の変化が少ないのはNANO-D1のほうでした。
X-DDCとATOLLでは、いかにもハイレゾ!という鳴り方をしがちなんですけど、NANO-D1は素っ気ないほど自然に、それでいてしっかりハイレゾの情報量という慣らし方ですね。
おそらく通常音源でも内部的にアップサンプリングが施されているからというのもあるのでしょうが、この辺りにも実直さがにじみ出ている気がします。
また、実は意外と重要なところなんですが、X-DDCやATOLLではサンプリング周波数変更時やAudirvana Plusの再生開始・停止時に小さなポップノイズが出ることがあるんですけど、NANO-D1ではそれが皆無でした。
ATOLLでは結構高域寄りのノイズが出るので、アンプやスピーカーの負担が気になりますが、そうしたところへの配慮はさすが日本のメーカーだなと感じます。
#実は日本のメーカーでもノイズやリレー音がうるさいところが結構あるんですけどね。
さらにNANO-D1はヘッドフォンアンプという色も濃いので、こちらも。
SHUREのSRH240Aで試してみましたが、RCAと比べれば少し華やかさを伴った色合いを持った音色です。
残留ノイズはかなり少ないですが、ゲインが高いせいか、NANO-UA1よりは若干残るかな、という感じです。
SRH240Aはやや低域が薄めですし低インピーダンスですなので、もう少し量感のある低域を持つヘッドフォンのほうが相性が良いかもしれませんね。
なお、背面にはゲイン切り替えもありますので、幅広いインピーダンスへの対応という点ではNANO-D1のほうがさらに一歩上となっています。
ヘッドフォンアンプの比較ということで、LINNのアンプのヘッドフォン端子と比較してみましたが、こちらは低域はやや厚いものの歪っぽさを感じる部分もあり、NANO-D1のほうが現代的です。
NANO-D1はモニター志向でありつつ、DAC側の良質なサウンドを楽しませてくれるバランス感覚のある仕上がりだと感じました。
1週間程度の短い期間の試聴でしたが、これまでのNANOCOMPOシリーズ同様、やっぱりOlasonicさんの製品は真面目な造りですね。
うちの個性的(すぎる)なコンポ群とは違い、実直に音を紡いでくれます。
喩えが良いかどうかはわかりませんが、ATOLLは温野菜サラダみたいなもので、NANO-D1はフレッシュな生野菜といった感じなんでしょうね。
NANOCOMPOとして考えるとNANO-UA1とは自ら競合する部分が多いですから、選択肢としてはNANO-CD1と組み合わせて手持ちのアンプやスピーカーを使うケースが想定されそうで、その点でも味付けは出口側で、という姿勢は好ましいものだと思います。
NANO-UA1と比べるとDACのアナログ側や電源部による底上げが著しいと感じましたし、USB-DACとしてはもちろんのこと、AirMac ExpressのAirPlayやNANO-CD1、あるいは手持ちのCDプレーヤーとの組み合わせがオススメかな。
RCA出力を高めの可変出力にしたということは当然ながらパワーアンプも想定に入ってると思いますし、今後のNANOCOMPOシリーズにも期待したいところです。