Olasonicさんからついに発売されたUSB-DAC付きアンプ「NANO-UA1」を「NANO-CD1」といっしょにお借りしましたので、再び試聴と相成りました。
前回は試作機だったんですが今回のは製品版ということでパッケージも全て同梱されていますし、本体の上面にはこんな紙も貼ってありました。
これが極性合わせについての説明でして、どちらかと言うと電源に依存しない設計としているNANOCOMPOにあって、オーディオ界の通説的な電源の極性への言及があるというのはちょっと意外でした。
私自身は当初すっかり無視(オイ!)しまして耳でチョイスしましたが、中域を中心にして透明感に多少の変化が感じられました。
ACアダプタにAMラジオを近づけてノイズの具合を見るというのを良くやるんですが、極性によってビートノイズのレベルに変化があるようで、これが少ないほうがサウンドがやや大人しめになる傾向はあるものの、良好な印象です。
壁コンセントは必ずしもちゃんと極性通りに接続されていないケースも多いですから、とりあえずは紙の通りに繋いでみるとして、チューニングに際しては両方を試してみると良いかもしれません。
基本的にはNANO-CD1とNANO-UA1の組み合わせでの試聴ですが、スピーカーばかりはNANOCOMPOに今のところラインナップはありませんから、手持ちのDALI Royal Menuet IIを繋ぎます。
今使っているスピーカーケーブルはMONITOR Cobra6Sでかなり太いこともあり、バナナプラグがないと繋ぐことはできませんでした。
これだけ太いケーブルはちょっと例外的だと思いますが、前回の試作機の時にも書いたとおり、端子の穴の向きも相変わらずやや不定っぽいところもありますし、基本的にはバナナプラグを使ったほうが良いかと思います。
なお、接続の構成は以下のとおりとなりました。
CDP: Olasonic NANO-CD1(同軸デジタル入力)
Amp: Olasonic NANO-UA1
DAC: ATOLL DAC100(アナログ入力)
DDC: JAVS X-DDC(ATOLL経由)
USB: Mac mini
SP: DALI Royal Menuet II
なお、NANO-CD1には同軸デジタル入力での接続としましたが、NANO-CD1に付属のケーブルは使わず手持ちのものを使用しています。
付属ケーブルはご覧のとおり、お世辞にも立派なものとは言えないですし、長さも30cm弱くらいと短いので、他のDACと接続したり機器のセッティングの自由度も低くなるため使っていません。
セッティングを終えていよいよ試聴してみますと、特性は普段使っているMicromegaよりも質の高さを感じます。
これまで聴いたことのあるD級アンプの中では、デジタル(というよりもスイッチングノイズ)臭さが最も少ないのではないかと。
とりわけ2kHzあたりから上の中高域にかけての情報量が多く、エコー感が少なめでドライながらハイスピードで現代的なサウンドを聴かせてくれます。
高域はわずかに華やかで歯切れのよいサウンドですが、欲を言えば多少省略的な表現に感じる部分が見受けられます。
低域についてはダンピングが非常に良好で高域同様、キレの良さを感じますが量感豊かな表現というよりは歯切れ重視な傾向で、ソースによっては硬さが残りD級アンプっぽさが多少顔を出すこともあります。
ただ、バスドラムやチェロの響きなど、低域自体の分量は本体サイズから勝手に思い浮かべるような不足感を感じさせることは皆無で、ハイスピードでありつつも程よく迫力も演色されて心地良いバランスです。
音楽ジャンルについてもクラシックからジャズ、ボーカルものまで幅広く試してみましたが、どれもそつなくこなす安定感はブランド初のピュアオーディオ製品とは思えないほどです。
ここでもドライで分析的な傾向は当然ながら同じなので、ライブ録音もスタジオで録られた雰囲気になってしまったり、マルチレコーディングの音源で音像がバラバラに感じてしまうといったケースもありますが、それも高性能であるがゆえのことでしょう。
特にジャンル的な向き不向きはなさそうですが、私が聴くジャンルの中でいえばジャズトリオや女性ボーカルなどとの相性が良い気がします。
ここまではNANO-CD1との組み合わせで聴いてきましたが、ここからは他の機材からの入力を試してみます。
前回はUSB-DAC機能を中心に試しましたから、アナログ入力を中心に試聴していきます。
機材としてはATOLL DAC100からRCA-ミニプラグのケーブルで接続しましたが、UA1側のアナログ入力がミニプラグのみというのはやっぱりちょっと残念に感じる部分です。
ただ実際にはこうした旧来的なオーディオ思想に反して、ATOLLのサウンドがしっかり音に反映されてコンポーネントの組み合わせの楽しさがしっかり味わえます。
とりわけスピーカーの奥行き方向に音像が広がって明瞭になる部分がATOLLの特徴で、UA1のDACとの傾向の違いがはっきりと出てきます。
低域の重心も下がってATOLLのほうが情報量が増える印象ですが、音のバランスとしてはやや華やかになりすぎて少々耳障りに感じる傾向もあって、あとは好みといったところでしょうか。
こうやって使ってみると、NANO-CD1と組み合わせて使った時のNANOCOMPOのまとまりも非常に大きな魅力ですが、手持ちのコンポや他社製品など、いろんなブランドと組み合わせて音作りするのもオーディオ的な楽しみとしてアリかもしれません。
そうしたステップアップにおいてもアナログ入力は重要ですし、RCA-ミニプラグのケーブル選びも使いこなす上で重要かと思います。
今回の試聴でもNANO-UA1のサイズを超えた完成度の高さは再確認できました。
前述のとおり、どんなジャンルの曲でもそつなくこなすバランスの良さは特筆すべき点で、かなり暴れん坊で鳴らしづらいRoyal Menuet IIのクセのある艶を消しつつも上手に鳴らしてくれています。
いわゆる国産高級オーディオ機の音色に追いつき追い越そうという内容で、その完成度の高さと高性能を印象づけるものですが、反面、私のようにクセのある機器を愛する者としては少々面白みに欠けると感じる部分もあります。
初号機から贅沢な要望だとは思いますが、今後は徐々にOlasonicらしさを築いていってほしいと思っています。
ただ、すでに旧来のオーディオへのアンチテーゼとして大きな存在感を発揮してくれるものですし、ヘッドフォンやポータブルオーディオのみで音楽を楽しんでいる世代にぜひ使って欲しい製品です。