Olasonicさんからお借りしているNANOCOMPOシリーズのDSD対応USB-DAC搭載デジタルアンプ「NANO-UA1a」ですが、前回に続いてスピーカー以外のほぼ全てのメインシステムを置き換える形での試聴の感想を書いていこうと思います。
なお、試聴環境は前回同様、以下の構成です。
[ NANO-UA1a試聴システム ]
パソコン: Apple Mac mini
Amp: Olasonic NANO-UA1a
Speaker: DALI Royal Menuet II
電源タップ: ShelterUSBケーブル: ACOUSTIC REVIVE USB-1.0PLS
音声ケーブル: 未使用
スピーカーケーブル: CHORD Epic Twin
電源ケーブル: ACOUSTIC REVIVE POWER STANDARD-tripleC-FM(Shelter)
音出し開始直後はやや音の固さや定位の散漫さが感じられましたが、鳴らし始めて10分程度で落ち着いてきました。
貸出機がすでにエージングが進んでいるようですし、デジタルアンプだけあって電源Onからのウォームアップも早いようです。
以前お借りしたNANO-UA1と比べると中低域より下に厚みがあり、高域は刺激が少なめで穏やかなまとまり方です。
多少のオーディオ的ケレン味もありますが、全般的にはBGM的な使い方からリビング・寝室、さらにはテレビと組み合わせてのオーディオビジュアル用途まで幅広くこなせる優等生的な仕上がりです。
反面、普段から細かく追い込んできたメインシステムをそっくり置き換えてみると、物足りない部分も表出してくるのは致し方のないところです。
特に気になったのは、自慢の低域が下まで伸び切っていないところがどうしても気にかかりました。
Royal Minuet II自体がお世辞にも大口径ユニットではないわけで、より大型のシステムと組み合わせた場合にどうなるかは分かりませんし、このスピーカーが4Ωだという点も影響しているのかもしれません。
この低域の伸びの不足のために、全体的な音の迫力はあるのですが、体を包み込むような音楽的なエネルギー感が薄いように感じてしまいます。
正確さという点ではむしろいつものLINN黒箱よりも忠実に再現されているのかもしれませんが、音楽を心から染みこむように聴かせてはくれないのです。
これを持って私には「表層的」と感じたのですが、もちろんこれは裏を返せば真面目な音とも言えるわけで、ここはまさにもう「趣味・趣向」の領域でしょう。
ただ、デジタルアンプにありがちなのですけれど、その真面目な音色を創りだすために、「クセを最小限に見せる」ようなクセが付いている、とも感じました。
ここからは聴き慣れた楽曲を聴きながら、各ジャンルや楽器などとの相性を聴いていきましょう。
女性ボーカルは十分な艶がありますが、なぜか録音の悪さが表出しなくなっているようです。
さきほどのように細かいクセの部分が差し引かれてまとめられたような印象があります。
キラキラした輝きにやや欠けるところもありますし、全体的に透明な艶のある膜(サランラップみたいな)があるような印象を受けました。
ただ、これはそうした些細な透明感よりも全体的な音のまとまりや迫力を重視した、とも言えるでしょう。
ヴァイオリンの弦では主成分は強く伝わってくるのですが、艶の部分がかなり大きく抜け落ちていて、ある種、MP3的に感じます。
安定感はあり、どんな音源も確実にこなす安心感もあるのですが、音楽を聴いていて、細かな音色の機微にふと気づかせてくれたり、身震いするような発見が薄いようです。
これは音源自体にも問題がある可能性はあって、良く言えば「上手くパッケージングされた音」にまとまってしまっているのを、「そのまま」再現しているのかもしれません。
ここまでの試聴はCD品質のPCM音源で進めてきましたが、ここからDSD音源(DSD変換したものも含む)を聴いてみますと、こちらはグッと前に出てくる印象があり、好印象です。
艶もPCMの時よりも豊かですが、ややうるさく感じる部分もあって、音傾向自体がずいぶん違っています。
ここからは推測ですが、DSDの場合にはSRCを経由せずにDACに入ってくるため、SRCで整えられる傾向が薄らいだ、という部分があるのではないかと予想します。
さらにPCMに戻って、今度はハイレゾ音源を聴いていきます。
結論から書きますと、ハイレゾとCD音源でだいぶ差があるなというのが体感できるあたり、やはり性能は非常に高いものなのだと思います。
逆に言えばSRCを経由したCD品質の音源でも、もうちょっと深みが欲しいところです。
ハイレゾ音源は「キレイに鳴る」という感じで、解像度重視といったところでしょうか。
躍動感はやはり少々少なめですが、ある種現代的な音のまとめ方とも言えるでしょう。
試しにDigiFi No.15付録でハイレゾデジタル化したレコード音源も聴いてみましたが、やはり気になったのは低域の薄さです。
アシュケナージのライブ盤で意外と分厚い低域が入ってるんですが、これが艷やかなものの、コロコロと指先でころがるようなピアノの音色になってしまいました。
AD変換時によるものとNANO-UA1aの音の特徴が相乗効果でより強く出たように感じます。
グールドのインベンションは録音の古さばかりが強調され、電子ピアノを聴いているような残念な気分になってしまいました。
それぞれの音が現代的に明瞭に聴こえるからこそ、そう感じさせてしまうとも言えるのでしょう。
ここまでかなり手厳しく書いていますが、NANO-UA1の時よりはずいぶん良くなっていて、前回も書いたようにボリュームの精度と品質向上で、小音量時の音質は非常に改善されています。
我が家のシステムでいうと寝室システムの音に近いもので、心穏やかにサラっと聴く分にはとても良い仕上がりです。
ただそれでもあえて欲を言うならば、さきほどの表層感や音数の少なさの改善を望んでしまう部分もあります。
穏やかさの中に秘めた力強さ、そして時には繊細さ、といったものもこなせればなぁと、少々贅沢な期待をしてしまうのも、基本性能の高さゆえです。
その上で、そろそろOlasonicというオーディオブランドとしての「音楽観」みたいなものも確立してくれたらな、という思いも込めて書かせてもらいました。
ただ、そういった部分は本来、上位モデルのNANO-D1とNANO-A1の組み合わせに求めるべきものでしょうし、そちらなら組み合わせの工夫やケーブル類の取り回しなど、オーディオ的な楽しみ方を求められるかと。
NANO-UA1aの立ち位置(や価格帯)としては十分すぎるまとまりですし、前回も書いたとおり、DSDやハイレゾ音源を中心に現代的なサウンドを楽しむには素晴らしいデスクトップ/リビングオーディオが楽しめると思います。
なお次回は今回触れなかったヘッドフォンアンプとしてのNANO-UA1aについて書いてみたいと思っています。