MacBSの日常生活的日記

Olasonic TH-F4N

(10/2更新)
本日発売されたようなので、更新して再掲しておきます。

Olasonicからカナル型ヘッドホン「TH-F4N 」が10月上旬に発売予定と発表10/2に発売されました。
実は少し前に試作機をお借りしていたので、そのレビューも兼ねて紹介させてもらおうかと。

なお、パッケージや製品は試作品ですので、製品とは異なる可能性があります。
また今回も発売前の製品をお借りする貴重な機会をいただいていますが、報酬等はありませんので、思ったままに感想を書かせてもらっています。

これまでUSBスピーカー、USB-DACやアンプ、CDプレーヤーなどを輩出してきたOlasonicブランドですが、今回はちょっと毛色が違っています。
ヘッドフォン好きには知られてる「音茶楽」とのコラボ製品なんですよね。
音茶楽もOlasonicも社長さんがSONY出身というのもあって実現したものかと。

音茶楽としての名前で言うと「Flat4-涛(NAMI)」という形で、おそらく「Flat4-玄(KURO)」をベースに強化されたものと思われます。
音茶楽独自のツイン・イコライズド・エレメント方式はそのままに、制振効果の大きいM2052制振合金粉体塗料をセンターキャビネットなどに使用してあるとのこと。

さて詳しい商品紹介は製品ページなどを見ていただくとして、早速試聴時の感想を書いていきましょう。
まず最初に断っておきますが、非常に気に入ってしまって、返却後も音茶楽さんの販売サイトを何度も眺めているほどです。
発売がまだ少し先なので、待ちきれるかなぁと思ってみたり…。

ということで、到着後はエージングがてら、iPhoneで直接聴いてみました。
最初はエージング不足もあってやや低域が不足気味に感じましたが、緩やかに自然に伸びていて、なにより響きが豊かでまるでスピーカーで聴いているような不思議な感覚にとらわれました。
良い部屋の残響音のような部分があるのと、音数が多くて楽器の分離が良いのもそう感じさせる要因かもしれませんね。

特にピアノ、ギターの表現が特筆モノで、ピアノは実体感のある音でタッチノイズなどを目立出せすぎないウェルバランスで聴かせてくれます。
ヴァイオリンもボディの響きを美しく再現し、弦の擦れ音が目立たない、いわゆる「刺さらない」音が体感できます。
もちろん、刺さらないからと言ってそこが抜け落ちてるわけではないのも良点です。
さすがに交響曲になるとiPhoneのパワー不足もあって音場が少し箱庭的表現になりますが、それでもイヤホンらしからぬ再現性で楽しめました。

次にiBasso D2+Hj Boaにしてみると、これがちょっと意外なことに少し中低域が過多で歪みっぽさが出てしまいます。
これはどうもアンプ側のクセのようで、TH-F4Nの純度が高いこともあり、パワー系よりも低歪みのアンプのほうが似合うように感じました。
それでも楽器自体がしっかりと分離して聴こえるのは当然として、楽器の音色や録音時の雰囲気、エフェクトが細かく聴き取れるという点では機材の変化をしっかり確認できます。

さらにLINNのプリメインアンプ、MAJIK-ILのヘッドフォン端子に移動します。
こちらはメインのスピーカーを配置した環境にあるわけですが、そのスピーカーを前にして聴くと、ふとたまにスピーカーで聴いてるような錯覚を覚えるんです。
それくらい自然な音場表現もできているというのは凄いです。
エージング途中ということもあるのか、帯域ごとに少しずつ性格が違うような印象はあって、3wayスピーカー的な部分を感じたのはハウジングの構造にも起因しているのかな。
低域はスピード感がやや遅いものの、量感がしっかり、中域はソフトドームのようなふくよかさを持ちつつ、上品な描写で、高域はリボンツイーターのようなキラキラ感と透明感を併せ持ったものと私は感じました。

さらにエージングを進めつつ、装着具合による変化も確認してみます。
カナル型イヤホンはイヤーチップによる音の変化もかなり大きいですが、今回の製品は標準でコンプライのT-200が付属します。
最初は遠慮がちに少し浅めに挿してたせいもあって中域がやや薄い印象がありましたが、耳へ差し込む深さで音の印象がかなり変わるのが確認できました。
装着が浅いと耳の外側に音像ができる感じで、耳道の中に突っ込んでこないんですよね。
感覚的にあと1mmくらい奥という感じでしっかり入れたら音が前に出てきます。
深いほど中域が盛り上がってきて、ボーカルの中抜け傾向が減る感じかと。

また、お借りしている間は出来る限りエージングを進めましたが、10時間くらい聴いたあたりからエージングが進んで、当初あった帯域ごとに細かいムラが減ってバランスが良くなっていきました。
ただ、極端な周波数フラット志向ではなく、総合的なバランスで聴かせるタイプだと思います。
スピード感を求める感じではなく、響きを重視した優しい音色で長時間聴かせる、楽しめるサウンドが好みの方に合ってるかと。

いずれにしてもこれまでの音茶楽のヘッドフォン同様で、他のカナル型イヤホンとはいろんな意味で異なる部分があります。
私が感じたのはカナル型イヤホンというよりも、ある意味、スピーカーに近い存在じゃないかと。
さきほどもスピーカーから鳴ってると勘違いする場面があったと書きましたが、一発録りに近い録音だと特にそういう風に感じることが多かったです。
もちろんイヤホン特有の頭の中に定位する感じがないわけではないですし、マルチ録音やボーカルでは勘違いすることもまずないですけど、そうした録音の状態まで確認できるのはスゴイことかと。

スピーカーというと箱鳴りみたいなイメージを持たれてしまうかもしれませんが、TH-F4Nではそういうハウジングの鳴りはほとんど感じませんでした。
見た感じは結構鳴りそうに見えるんですけど、そういった鳴りが少ないのはM2052制振合金粉体塗料のおかげでしょうか。
あえて挙げれば、500Hzくらいにほんの僅かにプラスティックっぽい(?)響きが出るケースはありました。
バスレフのようなポンッと抜ける低域を感じる部分もほんの少しありましたが、これはこの響きが原因かもしれませんけど、それでも他のイヤホンやヘッドフォンよりは少ないものです。
むしろ、ハウジングを感じるどころか、イヤホン自体の存在さえ忘れることもあるくらいですからね。

手持ちのortofonのイヤホン、e-Q5とも比べてみました。
能率はずいぶん違って、LINNのアンプのボリューム表示でe-Q5は3くらい、TH-F4Nは7くらいで通常の再生音量です。
一聴するとe-Q5のほうがモニター的な表現に感じますが、実は音数で言うとTH-F4Nのほうが多く、情報量自体はリードしているのが分かります。
正直、TH-F4Nを知った後だとe-Q5はストレートに耳に刺さってくる感じで、長く聴いてるとだんだんうるさく感じてくるんですよね。
今回の聴き比べで、e-Q5の低域不足に改めて気づいたというのもあります。

TH-F4Nは聴き疲れせず、それでいて情報量は多いという部分で、私の愛用する機材との共通点を感じて、すっかり気に入ってしまいました。
あえて欠点を挙げるとすれば、音場がやや箱庭的なところくらいでしょうか。
それも良質な海外製ブックシェルフを彷彿とさせるもので、むしろ良さを感じるポイントにもなりうるのですけどね。

また、音漏れは中高域を中心に決して少ないほうではないですから、騒音の多い場所で大音量での使用はあまりオススメできないかも。
実際、私もバスの中で使ってみると低域不足に感じてしまう場面もありましたし、音漏れも多少あるなと感じました。
さらに真価を発揮するには良いアンプが重要になってくるのもあって、ヘッドフォンアンプにハマってしまうかも。
とりわけ、パワーよりも歪みが少ないアンプのほうが合ってるのだと思うので、その点でもOlasonicのNANOCOMPOとの組み合わせはベストだと思います。
とは言っても、最初に書いたとおり、iPhoneも歪み自体は少ないこともあってか、意外と好印象に鳴ってくれていたので万能に使えるイヤホンですけどね。

さらにマニアックな私の感想だけでなく、ピアノを弾く紗羅にも聴いてもらいました。
いつも音には厳しくてブランドとかも関係なく一刀両断する紗羅ですが、TH-F4Nは「ずっと聴いていられる、これは欲しい(!)」という言葉が返ってきました。
音茶楽でピアノを聴くと落ち着いていて聴きやすいのに、それでいてペダルの音まで聴こえるのにビックリしていましたね。
紗羅はortofonのe-Q5もお気に入りで愛用してますが、聴き比べてしまうと硬くて華やかに感じ、もう戻れないとも。

遮音性やサウンドの傾向などは万人向きと言えない部分もあるかもしれませんが、アコースティックで良質なサウンドを好む向きには非常にオススメできる逸品かと。
カナル型イヤホンが(先入観も含めて)苦手な人にこそおすすめしたいですね。

返却後、e-Q5もコンプライのイヤーチップで多少強化しましたけど、とにかく我が家では(ステマかと思ってしまうくらい)非常に高評価で、価格が4万円台くらいとそれなりにするのが課題ですが本気で購入を検討しています。
発売はまだ少し先だし、それまでに「Flat4-玄(KURO)」や「Flat4-粋(SUI)」も聴いてみて違いを比べてみたいと思ってるところです。

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