オヤイデ電気さんの電源タップ「OCB-1SX」をお借りしてレビューさせてもらうことになりました。
私が突撃メールでモニター希望の旨を思いきって連絡してみたところ、快く応じてくださった、という次第です。
なお、レビューにあたっては機材を無償でお借りしており、往復送料もご負担いただいています。
このようなご厚意に甘えさせていただいてのレビューですが、問い合わせ当初から思ったとおりに書かせていただくという、これまた自分勝手な要望をだしてこれも快諾いただいていますので、それに添って素直な感想を書かせていただきたいと思います。
電源タップと言ってもオーディオマニアでない方には三叉タップの大きいやつ、いわゆるPCタップみたいなものしか思い浮かばないかも。
それもある意味間違いではありませんが、ソケットの数は4つでコンセントがたくさん挿せるというのがコンセプトではありません。
むしろ「確実に」接続するという部分に注力し、オーディオ用電源ケーブルもしっかり挿せて、音質面での配慮もされた電源タップというわけです。
オヤイデのOCB-1はもう30年以上前に出た電源タップで、今回の「OCB-1 SX」はその改良型としてのやや上位モデルです。
電源タップ自体の電源ケーブルに先日製造終了が発表されたPCOCC-Aを導体とした「BLACK MAMBA」が採用されていて、ある意味、貴重な存在です。
またプラグはP-029をモディファイしたものが使われています。
というわけで、早速、私のメインシステムで使っているパワーディストリビューターから一部をOCB-1 SXに置き換えてみます。
先日Panasonicのホスピタルグレードに置き換えた壁コンセントからOCB-1 SXに給電し、そこからさきほどのパワーディストリビューター(プラグはPanasonicホスピタルグレードに交換済み)、そしてLINNアンプ2台分(Accuphase APL-1とWireWorld)を持ってきました。
借り物ということもあって設置はやや仮置きっぽい状況ですが、なにしろ20A対応3.5sq3芯キャプタイヤという太いケーブルで、しかも硬いわりにタップ本体は意外と軽いのでやや固定しづらい印象はあります。
そのために底面にはスパイクやインシュレーターが装着可能となっていますが、単体でももう少し重さがあると嬉しいかな。
あるいはもう少し柔軟なケーブルのほうが良いかなぁと思いますけど、PCOCC-Aのままというわけにもいかないでしょうし、そこはニューモデルに期待でしょうか。
さて、そこでいつものように試聴ディスクを中心に聴き慣れた曲を流してみると、スピード感が高まったことにちょっと驚かされました。
高域のキレというか、ダンピングファクターが上がったような印象で、これまで電源ケーブルを入れ替えて上手くいった時と同じような方向性の変化ですね。
楽器ごとに細かく耳をやってみると、ハイハットとベースの音が顕著に違ってきていて、パワーがありつつ輪郭もしっかりしたと感じます。
高域から低域までバランス良く情報量が増えていることの証なのでしょう。
反面、ピアノの音は耳辺りはソフトになりつつも、やはりこちらもバランスは崩れていません。
柔らかさの中に厚みやキレもあって、中域でもやはり好印象です。
ボーカルやギター、ストリングスなども明瞭に音楽としての魅力を感じるものですし、それぞれのパートからサウンドが溢れてくる感じなのは、ちょっと私も予想外の変化でした。
パワーディストリビューターは非常に便利で、機器への負担も考えたものですが、オーディオとしてはやはり電源タップのほうが良いのかなぁとも再認識してしまいました。
とりわけディスクや音源に含まれたものを余すこと無く伝えようというサウンドになっていますね。
ある意味、生演奏でも環境が整わなければここまでは受け取れないかもという風に思えてしまうのもルームオーディオの醍醐味ですが、それを下支えするのは今回の電源タップに限らず、飽くなき鮮度への拘りなのかもしれません。
もちろん今回の感想の全てが電源タップだけによるものではなく、うちのシステムではここがボトルネックだったから、というのもあるかと思いますが、だからこそ電源タップの重要さを再認識した次第です。
それでもあえて欠点を挙げるとすれば、楽器(たとえばピアノの残響)によっては少し鉄っぽい響きが乗るケースがあるようで、その響き自体もややドライ傾向があるように感じます。
また、電源がしっかりしたせいもあるのか、かなりクセの強めな我が家の機器の個性が薄れる傾向もあります。
LINNやDALIがまるでAccuphaseのように…というとちょっと大げさかもしれませんが、電源トランスが大きくなったような雰囲気もあって、裏を返せば電源タップが電源回路強化のような役割も多少担ってくれるのでしょう。
音傾向としては全般にやや真面目すぎる印象もありますが、これまでメインシステムがちょっと苦手にしていたジャズやポップスでもボリュームを上げたくなったのも面白い変化です。
実際にボリュームを上げてみても、うるさいという気が全くしない(上げ過ぎには要注意ですが)というのも不思議なものです。
正直ここまで期待していなかったんですけど、ロングセラーになってるだけのことはあるのだなと改めて納得させられました。
こうなるとデジタル系も含めて全てをOCB-1シリーズで…と思ってしまいますが、あくまでも借り物ですし、返却した後の落胆落差が怖いです…。
もちろんシステム構成やさきほども書いたようなボトルネックとの関係もあって、全ての環境でこう上手くいくとは言えないかもしれませんが、歴史と品質からしてもオススメのオーディオアクセサリーだと思います。