SAECさんからお借りしているPC Triple C採用の電源ケーブル「PL-5800」ですが、エージングも進みましたので、手持ちの各種電源ケーブルと比較してみました。
比較対象としたのは線材もそれぞれに異なる以下のケーブルです。
・WireWorld STRATUS Series 5-2 (OFC)
・ACOUSTIC REVIVE POWER MAX-5000 (PCOCC-A)
・WireWorld AUP III (グレン・オプチマイズド銅+ポリマーコーティング)
まずSTRATUSとの比較ですが、一聴していちばん感じるのは歪みが減っているという点でしょう。
PL-5800に変えることで特に高域を中心に歪みが減ったので、ヴァイオリンが滑らかになりました。
やや艶が減ったようにも感じられがちですが、美しく余韻だけが残っています。
音傾向としては量感よりも伸びと腰の低さで表現する印象です。
全体的には癖が少なく、とにかくすべてが非常に明瞭で見通しが良いのが特徴的です。
前回も書いたとおり、エフェクトやスタジオの残響なども聴き取れるほど分解能が高く濁りも少ないのですが、その分、ややドライな傾向で長く聴いていると情報過多になりがちな部分は確かにあります。
次にPOWER MAX-5000ですが、これはSAECもこれまで採用してきたPCOCC-Aを使ったケーブルです。
PCOCC-Aは音が硬いと言われがちですが、登場から時間が経過したこともあり使いこなしも固まっていて、このPOWER MAX-5000でもむしろ強調感がない自然で流麗なサウンドを聴かせてくれます。
ただどうしても高域には少しだけキラキラした音色が乗るところはあるようで、それを抑えるために全体に抑制的な部分は出ているかもしれません。
その点、PL-5800の採用するPC Triple Cは全域に渡って鮮度が高いため、あまりそれを抑えこまずに出してきているような印象です。
POWER MAX-5000は中低域が控えめなのに対して、PL-5800はグッと前に出てきますから、その点でかなり好みが分かれるかもしれません。
これがPCOCC-AとPC Triple Cという導体そのものの違いとは言い切れませんが、だいぶ方向性の違う素材であることは間違いなさそうです。
最後にWireWorldのAUP IIIですが、これはまた別の意味でPL-5800とは違った個性を持っています。
一言で言ってしまえばPL-5800は現代的、AUP IIIはビンテージ的な鳴らし方でしょう。
PC Triple Cの驚くほどの鮮度の前では、一聴して古さを感じずにはいられませんが、リビングでくつろいで音楽を楽しむ我が家のスタイルにはちょっと鮮烈すぎる面もありますし、機材との相性もオールドなLINN黒箱とは方向性に違いがありそうです。
色々と比較試聴してみてやっぱり個人的に気になるのは、素晴らしい性能ゆえの鮮烈さでしょう。
喩えが良いかどうか分かりませんが、普段0.5くらいの近視の人が急に視力1.5くらいに矯正されるメガネを掛けたような感覚なんですよね。
たしかに最初は恐ろしく感動するんですが、「やっぱりこのメガネ、ちょっと疲れるかも」という、あの感覚を覚えました。
ただ間違いなく言えるのはPC Triple Cの潜在能力は恐ろしく高いもので、その優れた物性をベースにSAECの技術で現代的オーディオシステム向けにしっかりチューニングされている電源ケーブルです。
音傾向の好みは人それぞれですけれども、まだ登場したばかりのPC Triple Cの特性と音楽性がうまく融合しているのはSAECの技術力によるものに他ならないでしょう。
今後はさらに音傾向をコントロールしたバリエーションなども増えてくるかと思いますが、PC Triple Cの鮮烈さに興味がある方にはオススメできる完成度のケーブルだと感じた次第です。