SAECのソリッドターンテーブルシート「SS-300」をゲットしてみました。
トーンアーム時代から親しんでいる方はご存知でしょうが、ここでいうサエクはオーディオエンジニアリングという会社のほうで、私も愛用しているWE-407/23を開発していたところということになります。
今のサエクコマースも別に無関係ではなく、ジムテックから同じように分離独立したもので、当時も販社を請け負っていたはずです。
少し脱線しましたが、このシート、ゴムなどの柔らかい素材でできたものと正反対に「特殊合金」製という、まさにソリッドなものです。
説明書にはジュラ系合金とありましたので、アルミ系(銅との合金?)ではあるのでしょう。
WE-407/23のアームパイプも似たような素材だったと記憶しています。
異種金属を組み合わせたほうが制振には良いと認識していたので、うちのBL-99V(アルミ製)とは異種とギリギリ言えるかな?という感じです。
砲金などだと効果がさらに高いかもしれませんね。
それでも入手しておきたかったのはSAEC好きというのもありますが、BL-99Vのサクション(吸着)がいつまでまともに動作するか不安があったためです。
吸着しなくなるとサクション用のシリコンゴムがあるために、そのままだとレコード盤が浮いた状態になってしまうんですよね。
その点、このシートはどうも当時のマイクロのターンテーブルを意識して設計されたようで、見事にこのシリコンゴムを避けてターンテーブル自体と密着して装着することができます。
その分、高さはずいぶん高くなりますので、トーンアームの高さや水平などを調整しまして聴いてみました。
とにかく音の変化はかなりのものです。
サクションポンプへの電源供給も止めた(プレーヤーの裏のコンセントから抜いた)ので、まずそのノイズ(ポンプ自体とカートリッジを経由するもの)が減りました。
またスタビライザーを載せるとレコードが薄い場合には外周が少し浮く形に変形しますので、スタビライザーもひとまずやめました。
その影響もあってか、抑圧感のない開放的なサウンドになり、音に広がりが出ました。
細かい音が増えた気がしますし、全体的にはより現代的な方向になるようです。
ソリッドシート自体を叩けばかなりカーンという響きがありますが、ターンテーブルに載せればほとんど鳴きませんし、再生音は金属的な響きは感じません。
そこは説明書にも記載がありましたが、余計なゴムやスタビライザーは使わないように!というのは正しいのだと思います。
さらにはネジでターンテーブルに固定する方法とか、レコードのレーベル部分に穴を開けてスリップしないようにする方法なども書かれていましたが、さすがにそれは過激過ぎますね。
全体的な印象としては中低域のもたつきが減っていて、ZYXがライラっぽくなったような、そんな感覚です。
空間再現性がかなり高まっていて横方向の広がりが出ています。
音色もより細かいところまで描写されますが、低域はだいぶタイトになったように感じます。
これも謳い文句上の「100~400Hz付近での共振を防ぎ、10~20dBの共振防止効果を実現」というのと合致するようではあります。
ただ、その分、少し低域の厚みが失われた感もありますし、重心が上ずった印象もあるのは確かです。
現状はまだサクションポンプも元気ですし、ひとまず元に戻して聴いてみました。
ちょうど聴こうと思ったレコードが軽く反っていて、吸着を常用している身としてはカートリッジが上下しているのを見るだけで精神衛生上良くないというのもありました。
結果的には、低域はやはり圧倒的にこれまでの構成のほうが厚みがあります。
広がりは減りますが、それも悪い意味合いばかりではなく、より定位がタイトになるような印象です。
こちらのほうが描写の線がやや太め、SAECのソリッドシートを使うとずっと繊細で細い描写になりますから、どちらが正解かはなかなか難しいところですけれども、私の好みからすると沈み込むような低域がある、これまでの構成のほうが好きかな。
原因はなんとなく分かっていて、吸着で盤の平面性を担保すると普通ならサブソニックフィルターでカットするような領域までしっかり出せるのと、その帯域がフォノイコやスピーカーなどに入ることで混変調のような形で低域が濁ってしまうからだと思います。
SS-300を導入すると、全く別のプレーヤーかと思うくらい違うのにはちょっと驚きました。
本来なら盤の状態で使い分けできればベストなのですが、トーンアームの高さ調整だけは避けられませんねぇ。
水平はシートが870g、スタビライザーが1kgなので、そちらは片方だけ使うのであればほとんど調整なしで大丈夫ですから、今はサクションを使いつつ、たまにSS-300を使ったりして最終的にベストな構成を見つけていきたいと思っています。
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