TechDASから上位モデルのターンテーブル「Air Force ZERO」が正式発表されました。
すでに話題になっているのはなんといってもその価格からでしょう。
そもそもAir Force One Premiumもアッパープラッターがチタンのは1100万円でしたが、4000万円というのはインパクトがあったんでしょうね。
個人的には業務用機器や産業機械の価格イメージもあるので、それより台数が見込めそうもないですし、「ボッタクリ」感はありません。
ただ、Air Force One Premiumでも「ご注文時に販売価格の50%を予約金として申し受けます」という条件付きだったので、今回もおそらくそんな感じになるのでしょうが、そこはちょっとカッコ悪いかなとは感じますね。
そういうスタイルでやるなら、クラウドファンディングでもやれば良かったのに…と思ってしまいます。
なお生産台数は50台が上限だそうで、理由はすでに入手困難なPapst社製の3相12極シンクロナスACモーターを使っているから、とのこと。
保守用にも残すでしょうから、実際はさらに少なく、その後のメンテナンスも怖いですね。
ちなみにモーター自体もエアーベアリング方式となっているようです。
もちろんモーターを駆動するアンプ部が三相それぞれに強力なものが用意されているみたいなので、そこでの進化はありそうです。
正直、DDでもベルトでも駆動アンプによる違いというのは相当に比重が高いように思いますし。
ターンテーブルは総重量が350kg、プラッターが120kgだそうで、重厚長大の極致といったスタイルを貫いています。
異種金属の組み合わせになっていて「第一層は40mm厚の鍛造ステンレス(重さ34kg)、以後第二層が31mm厚の鍛造ステンレス(重さ20kg)、第三層が31mm厚の鍛造砲金(重さ20kg)、第四層が31mm厚の鍛造ステンレス(重さ20kg)、第五層が30mm厚の鍛造タングステン(重さ26kg)」とのこと。
コレ自体は他のメーカーでもぜひ近い構造にしてほしいくらいですが、厚さ163mmというのは高さ方向に厚すぎる感はありますね。
慣性モーメントからすれば外周に重さがあったほうが有利なわけで、暑ければシャフトにも負荷が掛かりやすいし、偏心もしやすいと思うのです。
基本はマイクロ精機の路線そのままなのでしょうが、以前のモデルを聴いてみても正直アレ?こんなんだっけ?という印象が拭えなかったんですよね…。
おそらく試聴会では調整が追い込めてなかったのだと思いたいところですが。
全体は当然のようにエアーベアリング、エアーサスペンション、そしてエアーバキュームによるディスク吸着となっています。
これも理屈では素晴らしいのですが、空気の脈動をうまく吸収したり、ポンプ自体の性能(静粛性も含め)が重要だと感じていて、重くなればなるほど要求性能も高くなってしまうのだと思います。
「プラッターを浮かせつつ、ディスクを真空吸着するなんて不可能だ」みたいな文面も記事で見かけましたが、それはもう昔からマイクロ精機でやっていたことで、それを今さらのようにセールストークにするのはちょっと違うのかなぁと個人的には感じました。
SAECのアームもそうですけど、ミッシングテクノロジーを再興するだけでも大変な偉業だとは思うのですが、今は今なりのアプローチももうちょっと盛り込んでほしいですし、実際はそれも入っているはずですから、そういう部分もアピールしてほしいです。
また、せっかくこれだけ「レコードの製造過程であるカッティングの状態を再現することこそレコード再生の究極」を実現したのですから、ぜひその技術を活かしてカッティングマシン自体も現代に蘇らせて欲しいところです。
これだけの超弩級ターンテーブルで究極を実現したのなら、いつまでもノイマンでは、ターンテーブルのほうが超越して、そちらのほうがボトルネックになってしまうはずですからね。
ちょっと嫌味っぽい取り上げ方になっていますが、個人的には高いからダメとか、物量投入主義が古臭いとは思っていません。
あとはそこで研鑽した技術をレコードという文化そのものに還元したり、実際に素晴らしいサウンドを楽しませてくれることに期待しています。
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