MacBSの日常生活的日記

ZYX Ring

なんだかすっかりZYX贔屓となってしまったのもあってか、以前から気になっていた「ZYX Ring」を入手してみました。

入手したと同時に販売終了の通知があって、オススメしづらい形になってしまったのですが仕方ありません。
そもそも何に使うものかすら、普通の人には理解不能な品でしょうし。

本体はこの指輪のような輪っかでして、内側に3本のトゲならぬ、0.3mmの硬質ステンレス棒が出ています。
周囲は非磁性金属リングとのことです。
簡単に言いますと、カートリッジを装着したヘッドシェルとトーンアームの間に挟むもので、普通だとゴム製のワッシャーを使うのが昔は一般的でした。

今はドライカーボン製とかいろんな素材のものが出ていたり、そもそもワッシャーなどを介さずに装着するケースが多いかと。
ヘッドシェルの側も上下2ピンでガタツキを減らす工夫がしてあるものも多いですし、My Sonic Labのようにツインキーロック方式などでほぼガタつかないものもあります。
ZYX Ringはそういう対策がされていないヘッドシェルや2ピンでも微妙に生じる型を取り去り、三点支持でしっかり固定することを目的としたものです。

装着は正直あまりやりやすいものではありません。
ワッシャーのように真ん中に挟んで締めるだけなんですが、ワッシャーとは違って周囲のリング部分はかなり大きめでクルクル回りますし、0.3mmと厚さもそう厚くないとはいえ、ワッシャーよりは肉厚ですからトーンアーム側の締め加減にコツが要ります。
3本のステンレス棒も微妙な接触具合がありまして、トーンアームに負担を掛けないようにしながらも最初はちょっと強めに締める必要があるかと思います。

ZYX Ring自体は0.5gほどありますので、針圧調整も当然必要でして、そのままだとほぼ0.5gほど針圧が重くなります。
オーバーハングも厳密には0.3mmほど手前になりますが、AC-1はそもそもいい加減なセッティングのままでしたので、むしろオーバーハングがちょっと大きくなってちょうど良いかなという感じです。

何枚か異なるジャンルのレコードを聴いてみましたが、不思議なことにこのリングを付けただけでZYX Ultimate 100のような音傾向が出てくるから面白いものです。
全体的に締まった印象で余計な付帯音が減り、現代的な雰囲気になります。
ただ全くクセがないわけではなく、やや中高域にピークがあるようにも思われますが、それはむしろヘッドシェルのブレが減った分、カンチレバーの色合いなどが出てきたのかな?という気もします。
現代的な雰囲気を感じるのは、おそらく定位や音場再現が高まったからだと推測しています。

とりわけ目立ったのがサックスなどの管楽器の音色がとても生々しくなった点です。
音像が明瞭になったからなのか、CDともまた違うリアルな音色に驚きました。
また、オーディオ的な観点では内周でも音が濁らなくなっています。
全体的には中域での改善が目立つようですが、色々な楽器の分離も良くなっていますし、全帯域でキレが良くなり、歪みが減ってクリアになっているのを感じます。

現代的になったのにも通じるかもしれませんが、とにかく曖昧さが減るようで、盤面の状態も良く分かるようになりました。
うちのプレーヤーの場合、サクションしてある関係でトーンアームの上下動は普通よりも少ないと思うのですが、それでも微妙な盤面の波打ちなどがあるとその影響がモロに出てくるような面も持ち合わせています。
ヘッドシェルに多少のガタツキがあるとそれを吸収してくれる要素もあるのでしょうが、ZYX Ringを使うとそういう曖昧さは皆無となるため、トーンアームへの依存度合いが高まってきます。
ただ、盤面の影響はその効果から見れば影響は微小で、全体としては音楽としての情緒が豊かになっていて、つい曲に聴き入ってしまう場面が多くなりました。
とにかくそれぞれの楽器の音色がとても明瞭で清々しさを感じるほどです。

また、室内温度によるダンパーの硬化なども手に取るようにわかるようになっています。
交響曲などを聴いた印象では低域がやや薄くなったのかな?と感じたこともありましたが、どうやらそれはこの温度が原因だったようです。
客観的に評価するように温度が安定した状態でPCM-D100にて録音比較してみました。

まずはZYX Ring無しのAccuphase AC-1の特性です。

次にZYX Ringを装着したAccuphase AC-1の特性です。

やや縦軸がズレていたりして見づらいのですが、ZYX Ring装着のほうがむしろ低域が伸びていて、高域はやや減っているくらいです。
まさにZYX Ultimate 100に近いピラミッドバランスになっているのが分かります。
ただ、聴感上は全く逆の印象もあり、おそらく余計な共振が減っているためにそのように感じるのかもしれません。
ヘッドフォンでモニターすると実際の出音はかなり異なっていて、中低域の濁りが減ってキレが良くなっているのが良く分かりました。
なお、いつも見てみるFLACのファイルサイズですが、これは双方で差はほとんどなく、両方とも198.4MBでした。

これはこれまで同じ曲を録音してみた中では、かなり大きめのサイズでして、Accuphase AC-2やLyra Helikonに次ぐものです。

Accuphase AC-2 : 201.7MB
Lyra Helikon : 199.1MB
Accuphase AC-1 : 198.4MB
DENON DL-103ボロン改 : 195.4MB
ZYX Ultimate 100 : 195.3MB
DENON DL-103 : 193.3MB

もちろんこの間にトーンアームスタビライザーも足していますし、その分、有利な結果が出ているというのもあるでしょう。
ただ全体としては、たとえノイズであっても高域がしっかり出ているほどFLACサイズは大きくなりがちですので、ピラミッドバランスになってもファイルサイズが減らなかったというのは音質面での改善効果があったと考えても良いのではないでしょうか。

これまた軸が違うかもしれませんが、参考までにZYX Ultimate 100とLyra Helikonの周波数特性も参考までに貼っておきます。

惜しむらくは販売終了してしまったことですが、ヘッドシェルの固定が意外と重要なファクターであるということは再確認できたと思います。
ゴム製のワッシャーをお使いの方は外して試してみるのも良いと思いますし、ドライカーボン製や金属製ワッシャー、あるいは2ピンやMy Sonic Labのヘッドシェルを使ってみるのもオススメかと。
なお、My Sonic Labのようなツインキーロック方式など特殊な接続方式のヘッドシェルでは、ZYX Ringは使えない可能性が高いのでご注意ください。

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