ZYXのMCカートリッジ「Ultimate 100」を手に入れました。
元々はR100-2がまだ残ってるお店があり、AmazonのYATRAと同じくダメ元で注文してみたところ、やっぱり在庫切れだったのがキッカケでした。
Amazonとは違い、お詫びのメールもすぐにいただき、相談にも載っていただいたので、こうなったらやはり現行モデルに行くしかないかなと。
お店の方はPhasemation PP-300を推してくださったのですけどね。
ZYXらしい凝った包装に包まれたソレはまさに宝石のようです。(お値段も宝石並みだけどな…。
和風の巾着袋や升を象った木製のケースなど、海外でのセールスを意識してるのでしょう。
シリアルナンバーから推測すると57番目となりますが、公式Facebookなどをみると90番台も製造されているので、手元に届いたのは店頭在庫だったのでしょう。
実際、他のお店だと取り寄せが多く、場合によっては納期に数ヶ月かかるケースもあるようです。
付属品としてはブラシと取付用の3種類の長さの異なるネジ(一つはパッケージ固定に使用されてます)、マイナスドライバーが付属します。
ただ、ZYXのスタイラスクリーナー同様、ブラシの毛先がちょっと曲がってたり、パッケージを開けるのにはプラスドライバーが必要だったりと、なかなかオチャメなところも相変わらずです。
最初からコレにしとけば良かったのでは?とも思うのですが、躊躇していた最大の理由はR100シリーズまではボロンカンチレバーだったものが、Ultimate 100ではカーボン製に変更になっていたためです。
評判が出回っていれば安心もできるのですが、あまりレビューも見当たらず、ちょっと冒険度合いが強いなぁと…。
ちなみにカーボンは1本ではなく5μmの繊維を1000本固めたものだとか。
針先はカンチレバーに直接ではなく別の部材に付いてる構造なのはこれまでのZYXと同様です。
スタイラスはマイクロリッジで、高域が非常に伸びていて寿命も2000時間を十分保証するものだそうです。
ヘッドシェルもしっかりしたものを調達しようかと思いましたが、とりあえずは手持ちのオルトフォンにオーディオテクニカのリード線を準備しておきました。
前述の通り、店頭在庫があったのですぐに届いた、というのもありましたけどね。
今回は私には珍しく新品ですから、しばらくエージングが必要で現段階でもまだ十分とは言えないでしょう。
ただ、巷にレビューがあまりにも見当たらないですし、少しでも参考になれば…とファーストインプレッションを書いてみることに。(これを読んで「よし、買うか!」という方もそうそう居ないでしょうが…。)
まず最初に感じたのがとにかく分厚い音で高域のクセが皆無というところです。
ZYXは正確無比なサウンドで、逆に言えばクセが少なすぎて面白みに欠けるというような評判も耳にしていましたが、Helikonのような純度優先で繊細過ぎる方向ではなく、しっかり音楽の熱さを伝えてくれます。
高域については最初の時点ではちょっと物足りないかな?とも思いましたが、ある意味それはこれまでカンチレバーの材質による振動を「ツヤ」として感じていただけだったようにも思います。
かと言ってダンピングされてしまっているわけではなく、まさに「究極の鮮明にしてダイナミックな原音」という謳い文句通りのものです。
出力電圧は0.25mVで、新品のカートリッジは大抵そうですが最初は小さめに感じますから、まだまだエージングが必要なのでしょう。
ちなみにHelikonが0.5mV、AC-2が0.18mVです。
話がちょっと前後しますが、AC-2は針交換ができず、HelikonはKleosに交換可能なものの、針交換が24万円以上とのこと。
Kleosの新品は30万円以上ですから仕方ないものの、これでは安心してHelikonを使えないというのも入手理由だったのでした。(他にカートリッジをたくさん持ってるだろ?え?聞こえない…。
で、話を戻しまして、ZYXはリアル発電系と呼ばれる磁気回路も特徴ですが、左右の音の分離具合は他のカートリッジでは味わったことのないものです。
その分、中央定位する部分はセッティングにシビアで、HekikonやAC-2同様、アームの高さやプレーヤの水平、カートリッジの取り付けアジマスなどにはかなり気を遣いました。
それでもLyraよりはだいぶラフに扱える感じでしょうか。
不思議なことに古い盤のほうがこうした設定にシビアな傾向があるようです。
左右の溝はそれぞれ45度のはずですが、溝の深さやバーティカルカッティングアングル辺りが関係してるのかな?
なお、トレースノイズは針の状態が良いこともあるのかもしれませんが、他のカートリッジより小さく、チリパチノイズも少なめです。
ただし盤面自体の状態を示すノイズはしっかりと拾い上げられてきます。
そういう調整が定まってくると、ピアノやドラムといった楽器それぞれの音色がとても本物に近いなと感じます。
一般的に言われる「温かい音」といったものとは全く違いますし、かと言ってCDのような音でもなく、どちらかと言えばマスターテープ寄りの音を再現してくれるようです。
これと聴き比べるとAccuphase AC-2はレコード芸術的な音作りがなされていますし、Lyra Helikonは繊細なオーディオエンスージアスト向けな音傾向なものの、トレーサビリティなどの基本性能がやや劣る傾向が感じられます。
それぞれに違いがあるだけに、この3本がうまく使い分けられそうですけどね。
また脱線気味になってしまいましたが、エージングも徐々に進んできてるはずなのになんとなく物足りなさがあって、これはやっぱりヘッドシェルやリード線がボトルネックになっているのか?と感じたので、とりあえず手持ちのあるリード線を替えてみました。
CHORD Carnival Silver Screenの自作線に替えたつもりだったのですが、コレが実はCello Stringsでした。
オーディオテクニカから大幅に変化したのでちょっと驚きましたが、これまで使った中でもベストに近いCello Stringsなら納得です。
これも市販品に比べるとそこまでワイドレンジではありませんが、それでも高域の伸びや先鋭さ、音の抜けが全く変わりました。
まだまだ改良すべき箇所もありそうですが、まだエージング中でもありますし焦ることはないでしょう。
その後もプレーヤーにRMF-1を復活させましたが、これも楽器の配置や音のキレ、低音の締り具合が全く変わってきました。
これまでのカートリッジでも何かを変えれば違いがそれなりには分かりましたが、どうしてもカートリッジの色に惑わされるところも多く、ここまで明確に判るのはUltimate 100が初めてかも。
それだけUltimate 100自体にとにかくクセがないのでしょう。
ですから、機材やセッティング、盤面の状態など、他のちょっとした変化も明瞭に描き出してしまうようです。
Ultimate 100の現時点での感想とすれば一言で「まるで原器のようなカートリッジ」ということになるかと。
それだけに「これじゃなきゃ出せない音」というものは持ち合わせていないですし、アナログ再生の楽しさとはちょっと違う次元にいるようなところがあるかもしれません。
ただ盤面に刻まれた音楽を熱く奏でること、それが本来の目的ですから、その意味でもリファレンスの一つと呼べるのではないかと思います。
エージングが進んできて、環境もさらにボトルネックをなくしていったら他のカートリッジとの比較などで再度、掘り下げた(?)レビューを書いてみたいなと思っています。
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