ACOUSTIC REVIVEレーベルからフォルテピアノのCD2作品が4/10に発売予定だそうで。
先日のリアリティ・エンハンサーをお借りした際に、特別に送っていただきました。
第5弾、第6弾となる今作はいずれもオランダのドープスヘジンデ教会にて録音されたものです。
ドープスヘジンデ教会というと児玉麻里さんですとか、オーディオマニアにも馴染み深いクラシック作品が多数収録されている場所でもあります。
2作品同時とはいっても七條恵子氏のサティは1871年製エラール、そして川口成彦氏のショパンは1842年製造のプレイエルと、それぞれに最適なフォルテピアノを割り当てているあたりはさすがのこだわりようです。
まずは第5弾となる七條恵子さんのサティから聴いてみました。
リアリティ・エンハンサー導入の成果も大いにありますが、まるでレコードを聴いてるようなリラックスした空間に包まれるのは教会の豊かな響きをきちんと収録してあるからでしょう。
おそらく調律も大変なピアノだと思いますが、オランダのドープスヘジンデ教会の空気をそのままに伝えてくれます。
サティのすこしエキセントリックな旋律もここでは心を穏やかにしてくれ、とても豊かで包容力のある音色にリラックスできます。
フォルテピアノというと古典楽器然りとした、高域寄りのペコペコした感触のサウンドをついつい思い浮かべてしまいがちですし、実際そういう音の音源が多いのですけれども、ここでは本来の豊かな音色を見事に再現されています。
むしろ平行弦による濁りのない美しい響きが印象的で、音が指を離れて空間に解き放たれていくさまが美しく再現されていきます。
派手な装飾はないけれど、一音一音まで神経が研ぎ澄まされていて、それでいてくつろぎのひとときを与えてくれます。
解説の中でカメラの焦点を合わせているような感覚と奏者の七條氏が書かれていますが、まさにそのようなシャープな旋律と豊かにゆっくり解けていくような余韻がとても美しいです。
録音もさることながら、七條恵子さんの演奏もとても素晴らしいもので、エラールの旨味をしっかり引き出すのはやはりフォルテピアノの名手ならではの手練れの技と感じました。
川口成彦さんのほうはショパンが愛用していたと言われるプレイエルで、こちらのほうがいわゆるフォルテピアノが思い浮かびやすい音色かもしれません。
それでも普通の録音よりずっと豊かで自然な響きに満ち溢れていて、低域の音量という意味では現代のピアノなのだろうと思いますが、どこまでも澄み渡る余韻はやはり平行弦ならではのものです。
奏者にとってはペダルワークでカバーできない部分もあるのでしょうし、大変なんだろうなぁと感じます。
せっかくなのでツマにも聴かせよう、DAPでも聴いてみようとリッピングしてパソコン周りやイヤホンでも聴いてみたのですが、正直これはかなりオーディオマニアも唸らせるくらいに再生は難しい部類のソフトかもしれません。
幸い、リアリティ・エンハンサーのテストも兼ねて試聴に使わせていただいたおかげもあり、徐々にその再現性が高まっていく様子を確認することができました。
もちろん機材を入れただけではダメで、セッティングを追い込むことで教会や演奏時の空気感すら感じ取れるようになるあたりは奥の深さを感じさせます。
とりわけ空間把握の再現にあたっては単に高級な機材では上手く再現できない場面が結構出てくるかも。
そこも含めて、真のフォルテピアノをオーディオルームに再現してみたい方にはかなりオススメのディスクです。
もちろん演奏も類稀なるフォルテピアニストお二方の作品ですので、その点だけでも素晴らしい音楽作品だと感じた次第です。